こんにちは。行政書士・社会保険労務士オフィスのぞみです。
前回までに、技術・人文知識・国際業務で認められる活動(在留資格該当性)と、学歴や専攻科目と業務の関連性(上陸許可基準)を確認しました。
今日は、具体的な許可事例・不許可事例をとおして、何をどのようにみられているのかを確認したいと思います。
本国(外国)大学を卒業した方の許可事例
(1)本国において工学を専攻して大学を卒業し、ゲームメーカーでオンラインゲームの開発及びサポート業務等に従事した後、本邦のグループ企業のゲーム事業部門を担う法人との契約に基づき、月額約25万円の報酬を受けて、同社の次期オンラインゲームの開発案件に関するシステムの設計、総合試験及び検査等の業務に従事するもの。
(2)本国において工学を専攻して大学を卒業し、ソフトウェア会社に勤務した後、本邦のソフトウェア会社との契約に基づき、月額約35万円の報酬を受けて、ソフトウェアエンジニアとしてコンピュータ関連サービスに従事するもの。
(3)本国において電気通信工学を専攻して大学を卒業し、同国にある日本の電気通信設備工事業を行う会社の子会社に雇用された後、本邦にある親会社との契約に基づき、月額約24万円の報酬を受けて、コンピュータ・プログラマーとして、開発に係るソフトウェアについて顧客との使用の調整及び仕様書の作成等の業務に従事するもの。
(4)本国において機械工学を専攻して大学を卒業し、自動車メーカーで製品開発・テスト、社員指導等の業務に従事した後、本邦のコンサルティング・人材派遣等会社との契約に基づき、月額約170万円の報酬を受けて、本邦の外資系自動車メーカーに派遣されて技術開発等に係るプロジェクトマネージャーとしての業務に従事するもの。
(5)本国において工学、情報処理等を専攻して大学を卒業し、証券会社等においてリスク管理業務、金利派生商品のリサーチ部門等に所属してシステム開発に従事した後、本邦の外資系証券会社との契約に基づき、月額約83万円の報酬を受けて、取引レポート、損益データベース等の構築に係る業務に従事するもの。
(6)本国において電気力学、工学等を専攻して大学を卒業し、輸送用機械器具製造会社に勤務した後、本邦の航空機整備会社との契約に基づき、月額約30万円の報酬を受けて、CAD及びCAEのシステム解析、テクニカルサポート及び開発業務に従事するもの。
(7)本国の大学を卒業した後、本邦の語学学校との契約に基づき、月額約25万円の報酬を受けて、語学教師としての業務に従事するもの。
(8)経営学を専攻して本国の大学院修士課程を修了し本国の海運会社において、外航船の用船・運航業務に約4年間従事した後、本邦の海運会社との契約に基づき、月額約100万円の報酬を受けて、外国船舶の用船・運航業務のほか、社員の教育指導を行うなどの業務に従事するもの。
(9)本国において会計学を専攻して大学を卒業し、本邦のコンピュータ関連・情報処理会社との契約に基づき、月額約25万円の報酬を受けて、同社の海外事業本部において本国の会社との貿易等に係る会計業務に従事するもの。
(10)本国において経営学を専攻して大学を卒業し、経営コンサルタント等に従事した後、本邦のIT関連企業との契約に基づき、月額約45万円の報酬を受けて、本国のIT関連企業との業務取引等におけるコンサルタント業務に従事するもの。
(11)本国において経営学を専攻して大学を卒業した後、本邦の食料品・雑貨等輸入・販売会社との契約に基づき、月額約30万円の報酬を受けて、本国との取引業務における通訳・翻訳業務に従事するもの。
(12)本国において経済学、国際関係学を専攻して大学を卒業し、本邦の自動車メーカーとの契約に基づき、月額約20万円の報酬を受けて、本国と日本との間のマーケティング支援業務として、市場、ユーザー、自動車輸入動向の調査実施及び自動車の販売管理・需給管理、現地販売店との連携強化等に係る業務に従事するもの。
日本の大学を卒業した留学生の許可事例
(1)工学部を卒業した者が、電機製品の製造を業務内容とする企業との契約に基づき、技術開発業務に従事するもの。
(2)経営学部を卒業した者が、コンピューター関連サービスを業務内容とする企業との契約に基づき、翻訳・通訳に関する業務に従事するもの。
(3)法学部を卒業した者が、法律事務所との契約に基づき、弁護士補助業務に従事するもの。
(4)教育学部を卒業した者が、語学指導を業務内容とする企業との契約に基づき、英会話講師業務に従事するもの。
(5)工学部を卒業した者が、食品会社との雇用契約に基づき、コンサルティング業務に従事するもの。
(6)経済学部を卒業した者が、ソフトフェア開発会社との契約に基づき、システムエンジニアとして稼働するもの。
(7)建築工学を専攻して本邦の大学を卒業し、本邦の建設会社との契約に基づき、月額約40万円の報酬を受けて、建設技術の基礎及び応用研究、国内外の建設事情調査等の業務に従事するもの。
(8)社会基盤工学を専攻して本邦の大学院博士課程を修了し、同大学の生産技術研究所に勤務した後、本邦の土木・建設コンサルタント会社との契約に基づき、月額約30万円の報酬を受けて、土木及び建築における研究開発・解析・構造設計に係る業務に従事するもの。
(9)電子情報学を専攻して本邦の大学院博士課程を修了し、本邦の電気通信事業会社との契約に基づき、月額約25万円の報酬を受けて、同社の研究所において情報セキュリティプロジェクトに関する業務に従事するもの。
(10)国際関係学を専攻して本邦の大学院を修了し、本邦の航空会社との契約に基づき、月額約20万円の報酬を受けて、語学を生かして空港旅客業務及び乗り入れ外国航空会社との交渉・提携業務等の業務に従事するもの。
(11)経営学を専攻して本邦の大学を卒業し、本邦の航空会社との契約に基づき、月額約25万円の報酬を受けて、国際線の客室乗務員として、緊急事態対応・保安業務のほか、乗客に対する母国語、英語、日本語を使用した通訳・案内等を行い、社員研修等において語学指導などの業務に従事するもの。
本邦の専門学校を卒業した方の許可事例
(1)マンガ・アニメーション科において、ゲーム理論、CG、プログラミング等を履修した者が、本邦のコンピュータ関連サービスを業務内容とする企業との契約に基づき、ゲーム開発業務に従事するもの。
(2)電気工学科を卒業した者が、本邦のTV・光ファイバー通信・コンピューターLAN等の電気通信設備工事等の電気工事の設計・施工を業務内容とする企業との契約に基づき、工事施工図の作成、現場職人の指揮・監督等に従事するもの。
(3)建築室内設計科を卒業した者が、本邦の建築設計・設計監理、建築積算を業務内容とする企業との契約に基づき、建築積算業務に従事するもの。
(4)自動車整備科を卒業した者が、本邦の自動車の点検整備・配送・保管を業務内容とする企業との契約に基づき、サービスエンジニアとしてエンジンやブレーキ等自動車の基幹部分の点検・整備・分解等の業務に従事するとともに、自動車検査員としての業務に従事することとなるもの。
(5)国際IT科においてプログラミング等を修得して卒業した者が、本邦の金属部品製造を業務内容とする企業との契約に基づき、ホームページの構築、プログラミングによるシステム構築等の業務に従事するもの。
(6)美容科を卒業した者が、化粧品販売会社において、ビューティーアドバイザーとしての活動を通じた美容製品に係る商品開発、マーケティング業務に従事するもの。
(7)ゲームクリエーター学科において、3DCG、ゲーム研究、企画プレゼン、ゲームシナリオ、制作管理、クリエイター研究等を履修した者が、ITコンサルタント企業において、ゲームプランナーとして、海外向けゲームの発信、ゲームアプリのカスタマーサポート業務に従事するもの。
(8)ロボット・機械学科においてCAD実習、工業数理、材料力学、電子回路、マイコン制御等を履修した者が、工作機械設計・製造を行う企業において、機械加工課に配属され、部品図面の確認、精度確認、加工設備のプログラム作成等の業務に従事し、将来的に部署の管理者となることが予定されているもの。
(9)情報システム開発学科においてC言語プログラミング、ビジネスアプリケーション、ネットワーク技術等を履修した者が、電気機械・器具製造を行う企業において、現場作業用システムのプログラム作成、ネットワーク構築を行うもの。
(10)国際コミュニケーション学科において、コミュニケーションスキル、接遇研修、異文化コミュニケーション、キャリアデザイン、観光サービス論等を履修した者が、人材派遣、人材育成、研修サービス事業を運営する企業において、外国人スタッフの接遇教育、管理等のマネジメント業務を行うもの。
(11)国際ビジネス学科において、観光概論、ホテル演習、料飲実習、フードサービス論、リテールマーケティング、簿記、ビジネスマナー等を履修した者が、飲食店経営会社の本社事業開発室において、アルバイトスタッフの採用、教育、入社説明資料の作成を行うもの。
(12)観光・レジャーサービス学科において、観光地理、旅行業務、セールスマーケティング、プレゼンテーション、ホスピタリティ論等を履修した者が、大型リゾートホテルにおいて、総合職として採用され、フロント業務、レストラン業務、客室業務等についてもシフトにより担当するとして申請があったため、業務内容の詳細を求めたところ、一部にレストランにおける接客、客室備品オーダー対応等「技術・人文知識・国際業務」の在留資格に該当しない業務が含まれていたが、申請人は総合職として雇用されており、主としてフロントでの翻訳・通訳業務、予約管理、ロビーにおけるコンシェルジュ業務、顧客満足度分析等を行うものであり、また、他の総合職採用の日本人従業員と同様の業務であることが判明したもの。
(13) 工業専門課程のロボット・機械学科において、基礎製図、CAD実習、工業数理、材料力学、電子回路、プロダクトデザイン等を履修し、金属工作機械を製造する会社において、初年度研修の後、機械の精度調整、加工設備のプログラム作成、加工工具の選定、工作機械の組立作業等に従事するとして申請があり、同社において同様の業務に従事する他の日本人従業員の学歴、職歴、給与等について説明を求めたところ、同一の業務に従事するその他の日本人は、本邦の理工学部を卒業した者であり、また、同一業務の求人についても、大卒相当程度の学歴要件で募集しており、給与についても申請人と同額が支払われていることが判明したもの。
日本の大学を卒業した留学生の不許可事例
(1)(在留資格該当性からの不許可)経済学部を卒業した者から、会計事務所との契約に基づき、会計事務に従事するとして申請があったが、当該事務所の所在地には会計事務所ではなく料理店があったことから、そのことについて説明を求めたものの、明確な説明がなされなかったため、当該事務所が実態のあるものとは認められず、「技術・人文知識・国際業務」の在留資格に該当する活動を行うものとは認められないことから不許可となったもの。
(2)(在留資格該当性からの不許可)教育学部を卒業した者から、弁当の製造・販売業務を行っている企業との契約に基づき現場作業員として採用され、弁当加工工場において弁当の箱詰め作業に従事するとして申請があったが、当該業務は人文科学の分野に属する知識を必要とするものとは認められず、「技術・人文知識・国際業務」の該当性が認められないため不許可となったもの。
(3)(報酬要件からの不許可)工学部を卒業した者から、コンピューター関連サービスを業務内容とする企業との契約に基づき、月額13万5千円の報酬を受けて、エンジニア業務に従事するとして申請があったが、申請人と同時に採用され、同種の業務に従事する新卒の日本人の報酬が月額18万円であることが判明したことから、報酬について日本人と同等額以上であると認められず不許可となったもの。
(4)(在留状況が良好でないことを理由とする不許可)商学部を卒業した者から、貿易業務・海外業務を行っている企業との契約に基づき、海外取引業務に従事するとして申請があったが、申請人は「留学」の在留資格で在留中、1年以上継続して月200時間以上アルバイトとして稼働していたことが今次申請において明らかとなり、資格外活動許可の範囲を大きく超えて稼働していたことから、その在留状況が良好であるとは認められず、不許可となったもの。
日本の専門学校を卒業した方の不許可事例
(1)(報酬要件からの不許可)日中通訳翻訳学科を卒業した者から、輸出入業を営む企業との雇用契約に基づき、月額17万円の報酬を受けて、海外企業との契約書類の翻訳業務及び商談時の通訳に従事するとして申請があったが、申請人と同時に採用され、同種の業務に従事する新卒の日本人の報酬が月額20万円であることが判明したため、日本人が従事する場合に受ける報酬と同等額以上の報酬を受けているとはいえないことから不許可となったもの。
(2)(在留資格該当性からの不許可)情報システム工学科を卒業した者から、本邦の料理店経営を業務内容とする企業との契約に基づき、月額25万円の報酬を受けて、コンピューターによる会社の会計管理(売上、仕入、経費等)、労務管理、顧客管理(予約の受付)に関する業務に従事するとして申請があったが、会計管理及び労務管理については、従業員が12名という会社の規模から、それを主たる活動として行うのに十分な業務量があるとは認められないこと、顧客管理の具体的な内容は電話での予約の受付及び帳簿への書き込みであり、当該業務は自然科学又は人文科学の分野に属する技術又は知識を必要とするものとは認められず、「技術・人文知識・国際業務」のいずれにも当たらないことから不許可となったもの。
(3)(在留資格該当性からの不許可)ベンチャービジネス学科を卒業した者から、本邦のバイクの修理・改造、バイク関連の輸出入を業務内容とする企業との契約に基づき、月額19万円の報酬を受けて、バイクの修理・改造に関する業務に従事するとして申請があったが、その具体的な内容は、フレームの修理やパンクしたタイヤの付け替え等であり、当該業務は自然科学又は人文科学の分野に属する技術又は知識を必要とするものとは認められず、「技術・人文知識・国際業務」のいずれにも当たらないため不許可となったもの。
(4)(在留資格該当性からの不許可)国際情報ビジネス科を卒業した者から、本邦の中古電子製品の輸出・販売等を業務内容とする企業との契約に基づき、月額18万円の報酬を受けて、電子製品のチェックと修理に関する業務に従事するとして申請があったが、その具体的な内容は、パソコン等のデータ保存、バックアップの作成、ハードウェアの部品交換等であり、当該業務は自然科学又は人文科学の分野に属する技術又は知識を必要とするものとは認められず、「技術・人文知識・国際業務」に該当しないため不許可となったもの。
(5)(在留状況が良好でないことを理由とする不許可)専門学校における出席率が70%である者について、出席率の低さについて理由を求めたところ、病気による欠席であるとの説明がなされたが、学校の欠席期間に資格外活動に従事していたことが判明し、不許可となったもの。
(6)(在留資格該当性からの不許可)ビルメンテナンス会社において、将来受け入れる予定の外国人従業員への対応として、通訳業務、技術指導業務に従事するとして申請があったが、将来の受入れ予定について何ら具体化しておらず、受入れ開始までの間については、研修を兼ねた清掃業務に従事するとして申請があり、当該業務が「技術・人文知識・国際業務」のいずれにも当たらないため不許可となったもの。
(7)(在留資格該当性からの不許可)ホテルにおいて、予約管理、通訳業務を行うフロントスタッフとして採用され、入社当初は、研修の一環として、1年間は、レストランでの配膳業務、客室清掃業務にも従事するとして申請があったが、当該ホテルにおいて過去に同様の理由で採用された外国人が、当初の研修予定を大幅に超え、引き続き在留資格該当性のない、レストランでの配膳業務、客室清掃等に従事していることが判明し不許可となったもの。
(8)(在留資格該当性からの不許可)人材派遣会社に雇用され、派遣先において、翻訳・通訳業務に従事するとして申請があったが、労働者派遣契約書の職務内容には、「店舗スタッフ」として記載されており、派遣先に業務内容を確認したところ、派遣先は小売店であり、接客販売に従事してもらうとの説明がなされ、当該業務が「技術・人文知識・国際業務」のいずれにも当たらないため不許可となったもの。
(9) (在留資格該当性からの不許可)電気部品の加工を行う会社の工場において、部品の加工、組み立て、検査、梱包業務を行うとして申請があったが、当該工場には技能実習生が在籍しているところ、当該申請人と技能実習生が行う業務のほとんどが同一のものであり、申請人の行う業務が高度な知識を要する業務であるとは認められず、不許可となったもの。
(10) (在留資格該当性からの不許可)栄養専門学校において、食品化学、衛生教育、臨床栄養学、調理実習などを履修した者が、菓子工場において、当該知識を活用して、洋菓子の製造を行うとして申請があったところ、当該業務は、反復訓練によって従事可能な業務であるとして、不許可となったもの。
まとめ
少し長くなりましたが、いかがでしたでしょうか。
次回は、「技術・人文知識・国際業務」に関してご質問の多い、
■入社後の実務研修期間の取扱い
■ホテル・旅館における活動
について確認します。
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