こんにちは。行政書士・社会保険労務士事務所オフィスのぞみです。
今回は、「そうだ、外国人材を採用しよう」と考えた時に、どのような順序で、何を考えるか、ご説明します。
外国人を採用する際のプロセスは、日本人を採用する場合と似ていますが、特有の手続きや注意点も存在します。
以下に、募集から入社までの一般的なプロセスを解説します。
職務内容と要件の明確化
まず、募集する職務内容とその要件を明確にします。
どのようなスキルや経験が必要か、またはどのような資格(※ここでいう資格は、在留資格のことではありません)が求められるかを明示します。
たとえば、
職務内容:来日観光客への通訳業務
必要な経験:ホテルや旅館での接客の経験、通訳・翻訳の経験
必要な資格:JLPT―N2以上、TOEIC750以上
など、採用したい人材像を明確にします。
なお、外国人であることを理由に、合理的な根拠がないのに、日本人と異なる待遇を定めることは認められていません。
労働基準法33条は「使用者は、労働者の国籍、信条又は社会的身分を理由として、賃金、労働時間その他の労働条件について差別的取り扱いをしてはならない」とされています。
これらの規定に反する契約は、労働基準法33条に違反することはもちろん、在留資格認定証明書の交付申請・在留資格変更許可申請の審査における不許可事由となります。
「外国人雇用管理アドバイザー」の活用
外国人雇用についての公的な支援制度として「外国人雇用管理アドバイザー」制度を利用することができます。
「外国人雇用管理アドバイザー制度」とは、我が国で就労する外国人労働者の増加に対して、適切な雇用管理及び適正な労働条件を確保することを目的として、事業主の皆様への指導・援助を行うため、厚生労働省によって行われている事業です。
無料で専門家(外国人雇用管理アドバイザー)の派遣を受けて相談をすることができます。
問い合わせ窓口は最寄りのハローワークです。
ご興味のある方は、ぜひご利用ください。
求人広告の掲載
適切な求人媒体に広告を掲載します。
国内外の求人サイト、大学のキャリアセンター、専門職のネットワークなどを活用します。
また、外国人向けの求人サイトやSNSを活用するのも有効です。
国内に在住している候補者を採用する場合には、ハローワークでも求人を受け付けています。
大規模なハローワークでは、外国人材紹介の専門部署が存在するところもあります。
とくに卒業を控えた留学生の採用を検討している事業者の方は、ハローワークや地元の商工会議所が実施する合同就職説明会・合同面接会の活用もおすすめです。
関東近県であれば、「東京外国人雇用サービスセンター」という厚生労働省の組織が、合同説明会やインターンシップ事業を展開しています。
あわせて求人情報も受け付けていますので、ご活用いただくことをお勧めします。
また、外国にいる候補者までターゲットを広げる場合には、人材紹介会社を経由することも方法の一つです。
人材紹介会社には、日本での就労を希望する労働者の出身国と固有のネットワークを有している会社が複数あります。
そのような会社を利用すると、適切な一次選考をしてから候補者を紹介してくれたり、採用内定後の渡日スケジュールの調整も対応してもらえることが多く、スムーズな採用を実現することができます。
応募者の選考
書類選考:
応募者の履歴書や職務経歴書をもとに、基本的な要件を満たしているかを確認します。
書類には学歴、職歴、資格、スキルの詳細が記載されていることが望ましいです。
面接:
一次面接を実施し、候補者のスキルや適性を評価します。言語の問題がある場合には、英語やその他の言語で面接を行うことも検討します。遠方の居住者や、海外の候補者と面談する場合には、リモート面接を活用することもあります。
あるいは、ある程度の人数の候補者を一時期にまとめて採用し、教育して育てたいと考えている場合には、人材紹介会社や登録支援機関、監理団体と協議して、現地のトレーニングセンターに直接面接に行くことも可能です。
現地の文化、どのような背景のもとに日本での就労を希望しているのかに触れることは、採用後の外国人とのコミュニケーションを円滑にし、人材育成に資するヒントが多いと考えます。
適性検査や技術試験:
必要に応じて、適性検査や技術試験を実施します。
これにより、候補者の能力や適性をさらに詳しく評価します。
内定通知
選考を通過した候補者に対し、内定の通知を行います。
この際、雇用条件や待遇について詳細に説明します。
日本での就労を希望し、採用内定を得る外国人材のなかには、ある程度の日本語ができる層も多くいますが、かならず外国人が理解できる言語での説明をしておく必要があります。
また、いわゆる「待遇」の通知のみならず、就労環境(たとえば、残業の有無、寮の有無、休日の有無)や、雇用をとりまく日本の法律や慣習(欠勤控除、社会保険料や所得税が控除されること、評価によって給与に差が出ることがあること)についても、丁寧に説明することが大切です。
雇用環境や、「お金をもらって働く」という価値観には、日本と諸外国では大きな違いがあることが少なくありません。一言で「外国」といっても、それぞれの文化は異なります。
ベトナムにはベトナムの労使環境、インドネシアにはインドネシアの文化、ネパールにはネパールの伝統があります。
特にはじめて日本に来る労働者の場合には、日本に来てから「こんなはずではなかった」という事態になると、労使ともに痛手が大きく、渡航費用や帰国費用などの膨大な負担が発生することになりかねません。
なお、厚生労働省では、英語・中国語・ポルトガル語・スペイン語・タガログ語・ベトナム語・韓国語・インドネシア語・ミャンマー語・ネパール語・タイ語・カンボジア語・モンゴル語の「労働条件ハンドブック」を提供しています。外国の方に日本の雇用条件を説明するために、大変有用な資料ですので、ぜひご活用ください。
https://www.mhlw.go.jp/stf/seisakunitsuite/bunya/0000056460.html
あわせて、ビザ取得や住居のサポートについても情報を提供します。
また、ビザが取得できなければ(在留資格認定証明書が交付されない場合や、在留資格変更許可がされない場合)、内定取消事由に該当することも伝えておきます。
雇用契約書の作成
雇用契約書の作成: 雇用契約書を作成し、候補者に提示します。
契約書には、職務内容、労働条件、賃金、勤務時間、休暇などの詳細を明記します。
外国語での翻訳を提供することも考慮します。
就労ビザの取得
いわゆる就労ビザを取得するためには、
・在留資格認定証明書の交付申請 ・在留資格変更許可の申請
のいずれかが必要であることは、ご理解いただいているとおりです。
今回は、「技術・人文知識・国際業務」の外国人を、海外から呼び寄せることを前提に、プロセスを確認します。
- 在留資格認定証明書の申請の必要書類
①在留資格認定証明書交付申請書
②写真(4cm×3cm)
③返信用封筒
④学歴証明書
⑤雇用契約書
⑥職歴証明書
⑦企業の登記事項証明書
⑧企業の事業内容、沿革、組織が分かる案内書類
⑨企業の財務諸表 そのほか、受入機関の規模によって、必要となったり、必要でなくなったりする書類があります。 - 在留資格認定証明書の発行
申請が許可されると、入管から在留資格認定証明書が発行されます。
この証明書を候補者に送付します。
なお、現在は、原本の送付は不要で、PDFデータで送付すれば足りることとされています。 - ビザ(査証)の申請
候補者は、在留資格認定証明書を持って、母国(滞在国)の日本の大使館や領事館で就労ビザを申請します。申請には、パスポート、写真、申請書などが必要です。 - ビザ(査証)の取得と入国
ビザ(査証)が発行されると、候補者は日本に入国します。ビザ(査証)の有効期間は、原則として3カ月です。来日した外国人は、入国後14日以内に住民登録を行います。
入社準備
- 入社オリエンテーション
新入社員向けのオリエンテーションを実施します。
日本の労働環境や文化、会社のルールやポリシーについて説明します。 - 住居や生活のサポート
外国人社員がスムーズに生活を始められるよう、住居の手配や生活に関するサポートを行います。また、銀行口座の開設や携帯電話の契約などの支援も提供します。 - 労働条件通知書の交付
労働条件通知書を新入社員に交付し、労働条件について再確認します。
なお、厚生労働省のホームページでは、英語・中国語・韓国語・ポルトガル語・スペイン語・タガログ語・インドネシア語・ベトナム語・カンボジア語・モンゴル語・ミャンマー語・ネパール語・タイ語のモデル労働条件通知書をダウンロードできますので、利用してみてください。
https://www.mhlw.go.jp/stf/seisakunitsuite/bunya/0000056460.html
入社
入社日を迎え、正式に入社手続きを行います。
労働契約の締結や社会保険の加入手続きを行います。
外国人の方も、健康保険・厚生年金・雇用保険については、日本人と同様に制度の加入対象となります。日本人と同様に、給与の額に応じて保険料を控除し、保険料を納入する手続きが必要です。
外国人の中には、年金は掛け捨てになると誤解したり、保険料の自己負担を嫌って加入をしないと主張する方もいらっしゃるようですが、任意加入ではありませんので、事業主の責任で加入させる必要があります。
なお、外国人の方が以下の4つの条件を満たすこととなり、日本を出国後2年以内に請求した場合には、脱退一時金が支給されます。
①日本国籍を有していないこと
②保険料納付済期間等または厚生年金の被保険者期間の月数が6月以上あること
③日本に住所を有していないこと
④年金(障害手当金を含む)を受ける権利を有したことがないこと
研修やトレーニングの実施
職務に必要なスキルや知識を身につけるための研修やトレーニングを実施します。
日本のビジネスマナーや文化に関するトレーニングも含めると良いでしょう。
まとめ
いかがでしたでしょうか。
外国人材を募集し、選考し、採用内定を決定し、入社に至るおおきな流れは、日本人と大きく異なることはありません。
しかし、外国人材固有のステップとして、
①在留資格が取得できるかを検討すること、
②在留資格を取得する手続きが必要であること、
をイメージとしてお持ちいただければ幸いです。
手数が増えるように見えるかもしれませんが、適切な準備と手続きを経ることで、企業にとって貴重な人材を迎えることができます。法律や規制を遵守し、外国人労働者が安心して働ける環境を整えることが重要です。
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