雑感。(日経新聞朝刊)住民の「10人に1人」が外国人である市区町村が14に拡大

こんにちは。行政書士・社会保険労務士事務所 オフィスのぞみです。
行政書士として就労系在留資格のことを書いてきたこのブログですが、今日は少し違うことを書きます。

今朝(2024年7月25日)の日本経済新聞朝刊に
「外国人、地域産業の担い手 「10人に1人」14市区町村」
という見出しの記事があったのをご覧になった方はいらっしゃいますか?

今日は、この記事について、私の感想を述べたいと思います。

記事の概要

日本経済新聞2024年7月25日 朝刊
見出し:外国人、地域産業の担い手「10人に1人」14市区町村
「総務省が24日発表した2024年1月の人口では、住民の「10人に1人」が外国人である市区町村が、前年の2倍近くの14に拡大した。都市から地方まで幅広い地域で外国人が産業を支えている。」

以下、気になった情報のみ抜粋します。
・総人口は、1億2488万5175人(前年比53万人減)
・生産年齢人口は59パーセントで横ばい
・日本人の人口は、1億2156万1801人(15年連続減少)
・外国人の人口は、初めて300万人を超え2年連続で1割づつ増えている。総人口に占める外国人の割合は2.7%。東京・名古屋・関西の三大都市圏が6割超。

・外国人労働者は、18年10月の146万人→23年10月の205万人
・総人口が増えたのは、東京・千葉・沖縄。日本人の人口が増えたのは東京のみ。すべての都道府県で外国人の人口は増加した。
・総人口に占める外国人の割合がもっとも高かったのは、北海道占冠(しむかっぷ、と読むんだそうです)村の33.8%。多くが大型リゾートホテルの社員寮に住んでおり、アジア人材が8割を占める。
・増加率では、熊本県が24.2%でトップ。TSMCの進出で半導体産業が盛り上がっている。台湾からは従業員だけでなくその家族の流入も増えており、また、台湾だけでなく周辺サプライヤーの流入もある。

以上、抜粋したのは私が気になった項目だけなので、ぜひ皆さま記事全文をご覧になってみてください。

感想

この記事を読んだ私個人の感想を以下に述べます。
記載の内容は、私個人の見解です。

≪多文化共生≫

日本の人口減少、特に労働力人口の減少は、止めることができないと言われています。
なお、脇道にそれますが、実は日本の「生産年齢人口」は、総人口が減り始めたとされる2015年と比較しても、数百万人規模で増えていることをご存じでしょうか。

それでは、なぜこのような環境下で日本人の「人手不足」と言われるのか。
その理由の一つとして、生産年齢人口(15歳~64歳)に占める労働力人口(就業者と働く意思のある失業者)の割合があげられます。
現在、日本の労働力人口は、生産年齢人口に対して80%と言われています。つまり、現役世代の20%の人々が、働く意思を有しておらず、それゆえ、人口動態と日本人の労働力人口が一致していないと考えれています。

いずれにしても、労働力の確保が大きな課題となる中、外国人労働者の増加は日本の産業界にとって不可欠な存在となっています。

とくに、47すべての都道府県で外国人人口が増加したということからは、都市部だけでなく地方においても、外国人労働者が重要な役割を果たしており、地域の経済活動を支える大きな力となっているということが分かります。

地方自治体が外国人労働者の定着を促進するために、いわゆる「定着奨励金」など様々な施策を講じていることは、労働力確保の観点から非常に興味深いものです。

一方で、外国人労働者が地域社会に溶け込むためには、文化や言語の壁を乗り越える必要があります。
記事によれば、江戸川区が外国人を対象に実施した調査では、「つきあいのある日本人はいない」との回答が41%にのぼったそうです。

異なる文化や価値観を尊重し、多様性を活かした共生社会を実現するためには、行政や企業だけでなく、地域住民とのつながりを強化するための施策やプログラムの導入が求められると考えます。

たとえば、

  • 言語支援
    • 日本語教室の提供
    • 多言語対応での窓口サービス
  • 住居支援
    • 外国人材でも入居がしやすい住宅情報の提供
    • 住宅保証制度の整備
  • 就労支援
    • 多言語での職業訓練(特に就労在留資格者の配偶者・子などへの支援)
    • 就職フェア
  • 医療・福祉支援
    • オンライン等を含めた医療通訳の配置
    • 福祉サービス窓口の多言語対応
  • 教育支援
    • 子供向けの教育サポート
    • 教育環境における多文化共生の推進

などは、すでに複数の自治体で取り組まれており、成功事例として他の自治体に参考にされている取り組みもあると聞いています。

なお、少し古い事例になりますが、特定技能外国人に対して、5つのモデル地域(北海道・群馬県・福井県・岐阜県・鹿児島県)において行われた「地域外国人材受入れ・定着モデル事業」(令和2年~令和4年)では、その事業の総括として、以下のことが述べられています。

  • 受入れ事業所の意識改革
    本事業の定着施策の1つとして、すべての受入れ企業の事業主や人事担当者等を対象に、異文化理解の研修(日本と対象国の文化の違い、異文化を前提としたコミュニケーションと人材活用の手法、外国人材受入れ時のトラブル事例のケーススタディ、等)を実施したところ、他の取組にくらべて評価が高かった。外国人材の受入れに関する不安解消のため、事業所や従業員の意識改革の必要性が強く示唆される。
  • 就労環境の整備
    定期面談で寄せられる退職につながる懸念がある相談の多くは、就労環境の問題から来ている。
    また、SNS経由で知った他の地域の給与が、現状の給与より高いため転職を検討したいという相談も出ている。
    日本人・外国人かかわらず「働きやすい職場」を作ることや処遇の改善を図ることが、定着を促進するためのポイントといえる。
  • キャリアパスの整備
    入国後は地域を問わず、トレーニングやキャリアアップ方法などのキャリアパスにつながる課題が上位に上がる。事業所と外国人材が長期視点で関係性を構築するためにも、技能の育成を行うとともに、技能を適切に評価し、評価に応じて適切な待遇を行う人事制度の整備、そうした取組の外国人材との明示的な共有が有効である。
  • 住居
    地方では通勤圏内に住居がなかったり、あったとしても外国人材へ貸してもらえない事例が複数発生した。住居確保に時間を要したことが原因で入国を断念した例もあった。
    さらに、入国後にも周囲に人が住んでいない地域や住居の古さに対する不満の声が定期面談でも挙がる。家賃補助・空き家や公営住宅の活用といった(外国人材の)住居確保のための自治体の取組や支援も有効である。
  • 交通機関
    クルマ社会の地方では、運転免許を持たない外国人材は、移動が制限され、生活の不便さ(買い物、余暇の過ごし方等に対する不満)の問題がでてくる。この生活の不便さの問題は、職場に不満がなくとも、転職を考える要因となりうる。事業所の支援でも一部解消できるが、コミュニティバスの整備など交通が不便な地域に対応した自治体の取組や支援も有効である。
  • 地域住民との交流
    大規模な地域のイベントは、日本人が海外の文化に触れ理解を深める効果が高いと考えられるが、イベント後も継続するような日本人と外国人材の深い関係を作ることは難しい。
    一方で、小規模な地域のイベントは、個々のイベントの効果は広くないものの、地域住民と外国人材がより深い関係性を築くことができる。その後の外国人材の生活でも、イベントで知り合った地域住民に助けてもらえることが増えたとの回答を定期面談でも確認できている。
    外国人材を受け入れる自治体では、イベントの規模や内容によって、交流の広さや深さが異なることを認識し、目的を明確にしたうえで交流イベントを企画・実施することが有効である。

≪労働者としての権利保護≫

外国人労働者も労働者ですから、労働者としての権利保護も重要な課題です。
彼らが安心して働ける環境を整備するためには、労働条件の適正化や法的支援が必要です。

最近参加した勉強会で、この分野の専門家である講師が「在留資格の問題と、労働者の権利保護の問題は、切り離して考える必要がある」とお話しされたのが大変印象に残っています。

個別のテーマとしては、「在留期間が更新できなかったときに、外国人労働者との雇用契約を終了することの適法性」だったのですが、講師の方の説明では「在留資格・在留期間と労働関係法令を直線で結びつけることが許されてしまうと、この労働者は、在留資格に該当しない活動をしているのだから(その弱みに乗じて)割増賃金を払わなくてよい、とか、もっというと不法滞在者には労働法の保護が及ばないとか、そういう考え方を許してしまうことになるが、当然そうではない」というお話でした。

このブログでもたびたび申し上げているように、入管行政書士という仕事をしていると、「不法就労をしない・させない」ということに目が向いてしまうのですが、一方で、外国人労働者が経済活動にはたす役割がここまで大きくなっていることを考えれば、外国人労働者の就労環境の整備というのは、重要なテーマだと感じています。

なお、とかく「悪」と評価されてしまう場面の多い現行の技能実習制度ですが、「帰国後実習生フォローアップ調査」という調査をご存じでしょうか。
この調査は、技能実習を終了して帰国した実習生に対して、帰国後の就職状況、職位の変化など技能実習の帰国後の実態を調べるために、法務省が行っている調査です。

令和4年度「帰国後技能実習生フォローアップ調査」では、以下の結果が公表されています。
・技能実習期間を通じて学んだことが、「帰国後役に立った」と回答した人は92%
・役に立った具体的な内容は、①習得した技能(78.9%)、②職場の規律(66.0%)、③日本での生活経験(65.4%)
・帰国後の就職状況では、①実習と同じ仕事で有業(45.8%)、実習と同種の仕事で有業(20.7%)
・送出機関や監理団体に保証金を預けたか、との質問に対して「保証金等はない」と回答した人が91.0%
・実習中に禁止されていた事項は「なかった」との回答が96.7%

もちろん、暴行や脅迫など、刑事罰に触れる行為は引き合いに出すまでもなく、パスポートを取り上げる、いじめやいやがらせ、口をきかない、仕事を教えないなどの行為は、外国人労働者以前の問題として、解決しなければならない問題です。

一方で、「国際貢献のため、開発途上国等の外国人を受入れOJTを通じて技能を移転する」という技能実習制度の目的そのものは、評価している外国人がいることも事実だと考えます。

このことからも、新しい「育成就労制度」では、人材確保と「人材育成」という趣旨が残されたと考えています。

まとめ

日本の人口減少と外国人労働者の増加は、社会の変革を促す大きな要素です。
これらを前向きに捉え、適切な対応策を講じることで、持続可能な社会の構築を目指すことができます。
行政書士・社会保険労務士事務所 オフィスのぞみは、この分野の専門職として、手続支援や労働環境の整備を通じて、企業の発展をうながすとともに、外国人労働者が安心して働ける社会づくりに貢献してまいります。

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