こんにちは。行政書士・社会保険労務士オフィスのぞみです。
前回までに、「技術・人文知識・国際業務」の在留資格該当性、すなわち、「技術・人文知識・国際業務」の在留資格によって行うことのできる活動を確認しました。
それでは、「技術・人文知識・国際業務」の在留資格を有する外国人の方が、認められない活動を行った場合、どうなるのでしょうか?
答えは、「不法就労」です。
外国人本人は「不法就労」、受入れている企業は「不法就労助長」の罪に問われることとなります。以下に詳細を確認します。
不法就労の類型
一般的に「不法就労」という言葉からは、いわゆる「不法滞在者」、つまり、日本に滞在する資格を有しない外国人が、在留資格を得ないまま、あるいは、在留期限を過ぎた後も、日本に滞在して就労する事例を想定する方が多いのではないかと思います。
もちろん、そのようなケースも不法就労ですが、2024年5月、警察庁・法務省・出入国在留管理庁・厚生労働省は、いわゆる不法就労外国人について
◆ 偽変造の在留カード等を行使して、就労する事案
◆ 国内外のブローカーが介在するものを含め、表面上は正規の在留資格を有するものの、その実態は在留資格に応じた活動を行うことなく、専ら単純労働に従事するなど、偽装滞在して就労する事案
◆ 実際には条約上の難民に該当する事情がないにもかかわらず、濫用・誤用的に難民認定申請を行い、就労する事案
◆ 技能実習生が、技能実習先から失踪し、SNS等を利用して他所で就労する事案
◆ 留学生が、中途退学処分を受けた後も帰国することなく残った在留期間を利用して、就労する事案
と解説をし、取締りを強化すると表明しています。
「技術・人文知識・国際業務」の在留資格を有する外国人が、在留資格によって認められないような単純労働に従事する場合も、不法就労にあたります。
不法就労助長行為
不法就労助長とは、具体的には、次のいずれかの行為を行い、唆し、又はこれを助けたこととされています。
①事業活動に関し、外国人に不法就労活動をさせること
②外国人に、不法就労活動をさせるために自己の支配下に置くこと
③業として、外国人に不法就労活動をさせる行為又は②に規定する行為に関しあっせんすること
「不法就労助長罪」については、入管法73条の2第1項は、「3年以下の懲役若しくは300万円以下の罰金に処し、またはこれを併科する」と定めています。この73条の2の罪については、両罰規定が定めだれており、法人の代表者又は法人若しくは代理人、使用人、その他の従業員がその業務に関して罪を犯したときは、行為者を罰するほか、その法人に対しても罰金刑を課するとされています。
さらに、過失のない場合を除き、「知らなかったこと」を理由として処罰を免れることはできない、とも定められています。
少し前の事件ですが、老舗の食品製造会社が、派遣会社から派遣された「国際業務」の在留資格のネパール人6名を、工場での菓子や肉まんの製造業務に作業員として従事させたとして入管法違反で送検されました。担当者の方は、「日本語がよくできて、優秀だったので働いてもらっていた」と説明したそうです。
2021年の事件でしたが、実際の社名も報道され、大きな影響があったと聞いています。
このようなことにならないよう、「その在留資格の外国人に」「その作業をしてもらって大丈夫なのか」ということを、よく確認していただきたいと思います。
では、このような不法就労を行う外国人に対しては、どのような制度が待っているのでしょうか。それは、
■在留資格の取消制度
■退去強制制度
です。以下に確認していきます。
在留資格の取消制度
在留資格の取消制度は、在留資格をもって在留する外国人が有する在留資格を取り消し、その外国人の在留を打ち切る制度です。
取消しを受けた外国人の有する在留資格は消滅し、在留資格を有しない状態となりますが、一般的には、30日を超えない範囲内で出国するために必要な期間が指定され、この30日の期間内に出国することを求められます(いわゆる出国準備)。
取消の原因となるのは、
①偽りその他不正の手段などにより在留資格の決定を伴う許可(上陸許可、在留資格変更許可、永住の許可など)や、在留期間の更新の許可を受けたこと
②在留資格を持って在留する者が当該在留資格に対応する活動を正当な理由なく一定期間行わないで在留していること
③中長期在留者が行わなければならない一定の届出について、これを行わないこと又は虚偽の届け出を行ったこと
です。
このうち、「在留資格に該当しない活動を行わない」類型は②にあたり、
・在留資格に対応する活動を、正当な理由なく行っておらず、かつ、他の活動を行っているあるいは「行おうとしていること
・在留資格に対応する活動を、正当な理由なく3月(高度専門職2号については6月)行っていないこと
が該当します。
退去強制制度
退去強制手続きの対象となる退去強制事由の代表的のものは、以下の通りです。
■不法入国・不法上陸をした者
いわゆる密入国(イメージとしては、夜中にこっそりボートで海岸線からあがってきたり、貨物コンテナに身を潜めて上陸してくるケース)にかぎらず、他人の有効なパスポートを使って入国する者も不法に上陸許可を得たことに該当します。
■他の外国人に不正に許可を受けさせる目的で文書等の偽変造を行うなどした者
■テロを行うおそれのある者
■不法就労助長者
■在留カード・特別永住者証明書の偽変造等を行い、唆しまたは助けたもの
■資格外活動を「もっぱら」行っていると明らかに認められる者
■一定の罪により懲役または禁錮に処せられた者(就労資格者に限る)
■届出義務に違反した中長期在留者
■在留資格の取消に伴い指定された期間を経過した不法残留者
退去強制手続
退去強制手続きは、具体的には、以下の流れにより行われます。
(1)違反調査の開始:入国警備官による調査の開始、容疑者当の取り調べ、臨検・捜索・押収、入国審査官への引き渡し
(2)違反審査:入国審査官への容疑者の引き渡し
(3)違反審判:容疑者から特別審査官に対する口頭審理の請求・審理
(4)法務大臣の裁決
(5)在留特別許可
(6)退去強制令書の執行・送還・自費出国
出国命令制度
出国命令制度は、不法滞在者の帰国を促進するため、以下の要件を満たす場合には、当該外国人を収容することなく、任意に出国させる制度です(退去強制手続きの特例)。
退去強制手続きによって、日本から退去した外国人は、強制送還後5年間(事情によっては10年間)日本に入国することができなくなりますが、出国命令制度により出国した場合には、日本に入国できない期間が原則として1年間に短縮されます。
出国命令制度により出国できる外国人とは、次のすべての要件を満たす者をいいます。
1 次のいずれかを満たすこと
・入国警備官の違反調査の開始前に、速やかに出頭することを希望して、自ら地方出入国在留管理局に出頭したこと。
・入国警備官の違反調査の開始後、入国警備官に法務大臣強制事由に該当していることを認定され、通知される前に、入国審査官か入国警備官に速やかに出頭することを希望したこと
2 違反が不法残留のみであること。
3 窃盗その他一定の罪により懲役刑等の判決を受けていないこと。
4 これまでに強制送還されたり、出国命令により出国したことがないこと。
5 速やかに出国することが確実であること。
まとめ
いかがでしたでしょうか。
今日、申し上げたような制度の知識は、必要とされる時が来ないほうがよいと思っています。ひとたび、このような事案が起こると、事業に及ぼす影響が大きく、関係者の心身の疲労は大変なものとなります。
「技術・人文知識・国際業務」にかぎらず、どのような在留資格でどのような活動を行うことができるのか、ぜひお気軽にお問い合わせください。
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