技術・人文知識・国際業務⑤/他の在留資格との関係

こんにちは。行政書士・社会保険労務士オフィスのぞみです。

前回まで、「技術・人文知識・国際業務」の在留資格で行うことのできる活動を細かく確認してきましたが、ここで、少し切り口をかえて、「技術・人文知識・国際業務」の在留資格と、ほかの在留資格の共通点と相違点を見てみたいと思います。

在留資格「企業内転勤」との関係

企業内転勤とは、外国の事業所から、人事異動により日本の事業所に転勤する専門技術者等を受入れるために設けられた在留資格です。典型的には、海外にある関連会社から日本の法人に出向してくる外国人や、海外にある本社から日本支社に転勤してくる外国人が該当します。

入管法上、「企業内転勤」の在留資格に該当する活動とは、
本邦に本店、支店その他の事業所のある公私の機関の外国にある事業所の職員が本邦にある事業所に期間を定めて転勤して当該事業所において行うこの表の技術・人文知識・国際業務の項の下欄に掲げる活動
とされています。

つまり、「企業内転勤」の在留資格において認められている活動は、「技術・人文知識・国際業務」の在留資格において認められている活動と同一であるということです。

一方、「企業内転勤」の在留資格が、「技術・人文知識・国際業務」の在留資格と相違している点は、
■日本における活動が、一定の転勤期間を定めた活動であること
■転勤した特定の事業所においてしか行うことができないこと
です。

「期間を定めて転勤して」とは、日本の事業所での勤務が一定期間に限られていることを意味しています。したがって、期間の定めなしに日本の事業所で勤務しようとする者については、企業内転筋の在留資格は付与されません。
具体的に「一定期間」が3年なのか、5年なのかは定められていませんが、少なくとも期間を定めずに転勤する場合は、「企業内転勤」ではなく、「技術・人文知識・国際業務」の在留資格を検討することとなります。

「当該事業所において行う」とは、転勤先の本邦にある事業所を意味しています。ただし、当初本邦のA事業所に転勤することによって在留し、同一企業内の別の事業所に、転勤元事業所の判断による命令として「さらなる転勤」をする場合にも、在留資格該当性が維持されると考えられています。

また、「企業内転勤」は、「技術・人文知識・国際業務」とは異なる在留資格ですので、「技術・人文知識・国際業務」の上陸許可基準に適合することは求められていません。

「企業内転勤」の上陸許可基準は、
■転勤の直前に外国にある本店、支店その他の事業所において、「技術・人文知識・国際業務」に該当する業務に従事している場合で、その機関が継続して1年以上あること
■日本人が従事する場合に受ける報酬と同等以上の報酬を受けること
とされています。

すなわち、外国での実務経験1年以上+報酬適合要件のみで、学歴要件などは求められていません。ただし、実務上は、大卒等の学歴や実務経験がある場合には、期間を定めて行う転勤の場合でも、「技術・人文知識・国際業務」の上陸許可基準を満たすのであれば、あえて「企業内転勤」を選択せず、「技術・人文知識・国際業務」を選択したほうが、申請書類も少なく、審査期間も短いことが多いです。

また、報酬については、その金額は日本人が従事する場合と同等以上であることが求められますが、報酬を支払う主体は、外国にある事業所でも、本邦にある事業所でも、あるいはその双方でもよいとされており、その場合は、その合計金額が「日本人が従事する場合と同等額以上」であれば適合すると考えられています。

在留資格「経営・管理」との関係

「経営・管理」の在留資格は、事業の経営・管理業務に外国人が従事することができるようにするために設けられたものです。具体的には、事業の運営に関する重要事項の決定、業務の執行若しくは監査の業務に従事する社長、取締役、監査役等の役員としての活動又は事業の管理の業務に従事する部長、工場長、支店長等の管理者としての活動が該当します。

入管法上、「経営・管理」の在留資格に該当する活動とは、
本邦において貿易その他の事業の経営を行い又は当該事業の管理に従事する活動
と定められています。(なお「貿易」は単なる例示で、貿易に限るものではありません)。

類型として、
■日本において事業の経営を開始し、その経営を行い又は事業の管理に従事する活動■日本において既に営まれている事業に参画してその経営を行い又は事業の管理に従事する活動
■日本において事業の経営を行っている者に代わってその経営を行い又は事業の管理に従事する活動
が考えられます。

さて、「技術・人文知識・国際業務」の在留資格該当性を定める規定は、明文で、「技術・人文知識・国際業務で行う活動には、経営・管理の在留資格に該当する活動を除く」と規定しています。

したがって、企業の職員として「技術・人文知識・国際業務」あるいは「企業内転勤」の在留資格をもって在留していた外国人が、昇進等により当該企業の経営者や管理者となった場合には、従前の在留資格のまま「経営・管理」の活動に従事することは(条文の解釈に限れば)資格外活動にあたると考えられ、直ちに「経営・管理」の在留資格に変更許可申請をすることが望ましいと考えられます。

ただし、実務上は、直ちに「経営・管理」の在留資格に変更することまでは求められておらず、現に有する「技術・人文知識・国際業務」や「企業内転勤」の在留資格の満了の際に、あわせて「経営・管理」への在留資格に変更許可申請を行う運用はよく行われています。

在留資格「教授」との関係・在留資格「教育」との関係

※在留資格「教授」と在留資格「教育」は似ていますが、在留資格「教授」は上陸許可基準の定めが適用されないなど、その性質は大きく異なります。ただし、本コラムの趣旨である「技術・人文知識・国際業務」との比較という点では、同時に比較したほうが理解がしやすいと考え、あえて併記します。

在留資格「教授」とは、
■本邦の大学において研究、研究の指導又は教育をする活動
■本邦の大学に準ずる機関において研究、研究の指導又は教育をする活動
■本邦の高等専門学校において研究、研究の指導又は教育をする活動
と定められています。

一方、在留資格「教育」とは、
■本邦の小学校、中学校、義務教育学校、高等学校、中等教育学校、特別支援学校、専修学校又は各種学校若しくは設備及び編成に関してこれに準ずる教育機関において語学教育その他の教育をする活動
と定められています(なお語学教育に限るものではありません)。

これを、場所的限定の面から考えると、
・(教授)大学または大学に準ずる機関、高等専門学校
・(教育)小学校、中学校、義務教育学校、高等学校、中等教育学校、特別支援学校、専修学校又は各種学校若しくは設備及び編成に関してこれに準ずる教育機関
と異なることが分かります。

では、たとえば、幼稚園や保育園で英語を教える場合はどうでしょうか。

幼稚園や保育園は、もちろん大学や高等専門学校でありませんし、また、教育の在留資格は原則として小学校以上の教育機関を想定していますので、いずれにも該当しないことになります。したがって、この場合、「技術・人文知識・国際業務」の在留資格を検討することとなります。

また、民間の語学学校において、語学講師の業務を行う場合には、やはり、「教授」でも「教育」でもなく、「技術・人文知識・国際業務」を検討することとなります。

在留資格「短期滞在」との関係

在留資格「短期滞在」とは、
本邦に短期間滞在して行う観光、保養、スポーツ、親族の訪問、見学、講習または会合への参加、業務連絡その他これらに類似する活動
と定められており、その在留期間は、「90日、30日、15日以内の日を単位とする期間」とされています。

したがって、「短期滞在」の在留資格で上陸許可を得た場合、資格外活動許可を受けることなく「収入を伴う事業を運営する活動又は報酬を受ける活動」を行うことは許されません。

ここで、「報酬を受ける活動」とは、役務提供が日本で行われ、その対価として給付を受けている場合は、対価を給付する主体である機関が日本にあるかどうか、また、日本国内で給付するかどうかにかかわらず、「報酬を受ける活動」に該当すると考えれています。

ただし、日本国外で行われる主たる業務に関連して、従たる業務に該当する活動を短期間日本で行う場合には、日本国外の機関が給付する報酬は、そもそも日本において行われる活動(従たる活動)に対して支払われるものではないと考えられ、「報酬」には該当しないとされています。たとえば、外国企業の職員が、日本に短期間出張し、外国にある企業のために商談や業務連絡を行う場合です。

一方で、当該活動が「従たる活動」と言えないような場合や、1度の滞在は短期間であってもそれを数次にわたり反復継続し、全体として「短期間」と言えない態様で本邦における活動を行っている場合には、「短期滞在」の在留資格を否定されることとなり、このような場合には、「技術・人文知識・国際業務」をはじめとする就労在留資格を検討することとなります。

まとめ

いかがでしたでしょうか。
これって、”「技術・人文知識・国際業務」なの?それとも、ほかの在留資格もあるの?”と迷われた場合には、参考にしていただけると幸いです。

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