技術・人文知識・国際業務④/現場作業の考え方と在留資格「特定技能」の活用

こんにちは。行政書士・社会保険労務士オフィスのぞみです。

今日は、「技術・人文知識・国際業務」の在留資格の中で、
■採用当初に行われるいわゆる「実務研修期間」をどのように考えるか
■ホテル・旅館での活動と在留資格該当性
■在留資格「特定技能」の活用
を確認します。

「実務研修期間」の取扱い

すでにこちらのコラムでも確認した通り、「技術・人文知識・国際業務」の在留資格に該当する活動とは、「学術上の素養を背景とする一定水準以上の業務」とされており、単に未経験者でも反復継続することによって習得できる程度の業務は、「技術・人文知識・国際業務」の在留資格には該当しないとされています。

この点、企業においては、例えば、飲食店での接客や小売店の店頭における販売業務、工場のライン業務等、採用当初に従業員の国籍を問わず、一定の実務研修期間が設けられていることはあると思われます。

入管のガイドラインによると、そのような実務研修は、その「実務研修」期間の活動のみを捉えれば「技術・人文知識・国際業務」の在留資格に該当しない活動であっても、それが日本人の大卒社員等に対しても同様に行われる実務研修の一環であって、在留期間中の活動を全体として捉えて、在留期間の大半を占めるようなものではないようなときは、その相当性を判断した上で当該活動を「技術・人文知識・国際業務」の在留資格内で認めています。

「在留期間中」の考え方

研修期間に行われる研修業務の在留資格該当性は、「在留期間中の活動を全体として捉えて判断する」とされています。

ここでいう「在留期間中」とは、雇用契約書や研修計画に係る企業側の説明資料等の記載から、申請人が今後本邦で活動することが想定される「技術・人文知識・国際業務」の在留資格をもって在留する期間全体を意味します。一回の許可毎に決定される「在留期間」を意味するものではありません。

そのため、例えば、今後相当期間本邦において「技術・人文知識・国際業務」に該当する活動に従事することが予定されている方(雇用期間の定めなく常勤の職員として雇用された方など)が、初回の在留期間を「1年」として決定された場合、決定された1年間全て実務研修に従事することも想定されます。

他方で、雇用契約期間が3年間のみで、契約更新も予定されていないような場合、採用から2年間実務研修を行う、といったような申請は認められないこととなります。

なお、採用から1年間を超えて実務研修に従事するような申請については、「研修計画」の提出を求め、実務研修期間の合理性を審査するとされています。

研修計画等

研修期間として部分的に捉えれば「技術・人文知識・国際業務」の在留資格に該当しない活動(飲食店や小売店での接客業務など)を行う必要がある場合、必要に応じ、日本人社員を含めた入社後のキャリアステップ及び各段階における具体的職務内容を示す資料の提出が求められることがあります。

当該実務研修に従事することについての相当性を判断するに当たっては、当該実務研修が外国人社員だけに設定されている場合や、日本人社員との差異が設けられているようなものは、合理的な理由(日本語研修を目的としたようなもの等)がある場合を除き、当該実務研修に従事することについての相当性があるとは認められません。

なお、採用当初に行われる実務研修の他、キャリアステップの一環として、契約期間の途中で実施されるような実務研修についても、同様に取り扱っています。

実務研修が設けられている場合の在留期間の決定

これら実務研修期間が設けられている場合、実務研修を修了した後、「技術・人文知識・国際業務」に該当する活動に移行していることを確認する必要があるため、在留資格決定時等には、原則として在留期間「1年」が決定されることとなります。

なお、在留期間更新時に当初の予定を超えて実務研修に従事する場合、入管に対して、その事情を説明する必要がありますが、合理的な理由がない場合、在留期間の更新が認められないこととなります。

ホテル・旅館等において外国人材が「技術・人文知識・国際業務」で就労する場合

上記実務研修と並んで、ご質問・ご相談が多いのが、「技術・人文知識・国際業務」の外国人材が、ホテルや旅館で就労する場合の在留資格該当性です。

前述の通り、「技術・人文知識・国際業務」の在留資格に該当する活動は、「本邦の公私の機関との契約に基づいて行う理学、工学その他の自然科学の分野若しくは法律学、経済学、社会学その他の人文科学の分野に属する技術若しくは知識を要する業務」又は「外国の文化に基盤を有する思考若しくは感受性を必要とする業務」とされています。

一方で、例えば、フロント業務に従事している最中に団体客のチェックインがあり、急遽、宿泊客の荷物を部屋まで運搬することになった場合など、一時的に「技術・人文知識・国際業務」に該当しない業務を行わざるを得ない場面も想定されます。

こうした場合に当該業務を行ったとしても、入管法上直ちに問題とされるものではありませんが、結果的にこうした業務が在留における主たる活動になっていることが判明したような場合には、「技術・人文知識・国際業務」に該当する活動を行っていないとして、在留期間更新を不許可とする等の措置がとられる可能性があります。

具体的な許可事例・不許可事例

入管が公表している具体的な許可事例・不許可事例を確認してみましょう。

≪許可事例≫

① 本国において大学の観光学科を卒業した者が、外国人観光客が多く利用する本邦のホテルとの契約に基づき、月額約22万円の報酬を受けて、外国語を用いたフロント業務、外国人観光客担当としてのホテル内の施設案内業務等に従事するもの

② 本国において大学を卒業した者が、本国からの観光客が多く利用する本邦の旅館との契約に基づき、月額約20万円の報酬を受けて、集客拡大のための本国旅行会社との交渉に当たっての通訳・翻訳業務、従業員に対する外国語指導の業務等に従事するもの

③ 本邦において経済学を専攻して大学を卒業した者が、本邦の空港に隣接するホテルとの契約に基づき、月額約25万円の報酬を受けて、集客拡大のためのマーケティングリサーチ、外国人観光客向けの宣伝媒体(ホームページなど)作成などの広報業務等に従事するもの

④ 本邦において経営学を専攻して大学を卒業した者が、外国人観光客が多く利用する本邦のホテルとの契約に基づき総合職(幹部候補生)として採用された後、2か月間の座学を中心とした研修及び4か月間のフロントやレストランでの接客研修を経て,月額約30万円の報酬を受けて、外国語を用いたフロント業務、外国人観光客からの要望対応、宿泊プランの企画立案業務等に従事するもの

⑤ 本邦の専門学校において日本語の翻訳・通訳コースを専攻して卒業し、専門士の称号を付与された者が、外国人観光客が多く利用する本邦の旅館において月額約20万円の報酬を受けて、フロントでの外国語を用いた案内、外国語版ホームページの作成、館内案内の多言語表示への対応のための翻訳等の業務等に従事するもの

⑥ 本邦の専門学校においてホテルサービスやビジネス実務を専攻し、専門士の称号を付与された者が、宿泊客の多くを外国人が占めているホテルにおいて、修得した知識を活かしてのフロント業務や、宿泊プランの企画立案等の業務に従事するもの

⑦ 海外のホテル・レストランにおいてマネジメント業務に10年間従事していた者が、国際的に知名度の高い本邦のホテルとの契約に基づき、月額60万円の報酬を受けてレストランのコンセプトデザイン、宣伝・広報に係る業務に従事するもの

≪不許可事例≫

(在留資格該当性からの不許可)本国で経済学を専攻して大学を卒業した者が、本邦のホテルに採用されるとして申請があったが、従事する予定の業務に係る詳細な資料の提出を求めたところ、主たる業務が宿泊客の荷物の運搬及び客室の清掃業務であり、「技術・人文知識・国際業務」に該当する業務に従事するものとは認められず不許可となったもの

(充分な業務量が認められないことによる不許可)本国で日本語学を専攻して大学を卒業した者が、本邦の旅館において、外国人宿泊客の通訳業務を行うとして申請があったが、当該旅館の外国人宿泊客の大半が使用する言語は申請人の母国語と異なっており、申請人が母国語を用いて行う業務に十分な業務量があるとは認められないことから不許可となったもの

(在留資格該当性からの不許可) 本邦で商学を専攻して大学を卒業した者が、新規に設立された本邦のホテルに採用されるとして申請があったが、従事しようとする業務の内容が、駐車誘導、レストランにおける料理の配膳・片付けであったことから、「技術・人文知識・国際業務」に該当する業務に従事するものとは認められず不許可となったもの

(報酬要件を満たさないことによる不許可)本邦で法学を専攻して大学を卒業した者が、本邦の旅館との契約に基づき月額約15万円の報酬を受けて、フロントでの外国語を用いた予約対応や外国人宿泊客の館内案内等の業務を行うとして申請があったが、申請人と同時期に採用され、同種の業務を行う日本人従業員の報酬が月額約20万円であることが判明し、額が異なることについて合理的な理由も認められなかったことから、報酬について日本人が従事する場合と同等額以上と認められず不許可となったもの

⑥ 本邦の専門学校においてホテルサービスやビジネス実務等を専攻し、専門士の称号を付与された者が、本邦のホテルとの契約に基づき、フロント業務を行うとして申請があったが、提出された資料から採用後最初の2年間は実務研修として専らレストランでの配膳や客室の清掃に従事する予定であることが判明したところ、これらの「技術・人文知識・国際業務」の在留資格には該当しない業務が在留期間の大半を占めることとなるため不許可となったもの

まとめ(在留資格「特定技能」の活用)

いかがでしたでしょうか。
大まかな考え方として、
・実務研修の場合、将来「技術・人文知識・国際業務」に該当する活動を行うことを目的として、キャリアパスの一環として、日本人社員にも同等に行われるものであるかどうか
・ホテル・旅館業務の場合、在留資格に該当しない活動が「主たる業務」とならない範囲におさまっているか
という考え方を知っておいていただければと思います。

また、一方で、飲食店での接客を主たる業務とする社員、製造業を主たる業務とする社員、ベッドメイキングや配膳を主たる業務とする社員を採用されたい場合は、「特定技能」外国人の活用をご検討ください。

■飲食店での接客については、「特定技能(外食業)」
■製造業については、「特定技能(飲食料品製造)」「特定技能(工業製品製造業)」
■ホテル・旅館においては、「特定技能(宿泊)」
が、それぞれ該当します。

特定技能外国人の採用・活用については、人材紹介会社の活用もご検討ください。弊所でも数社の人材紹介会社と連携しており、ご希望の業務に応じた人材紹介会社のご紹介が可能です。

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