こんにちは。行政書士・社会保険労務士オフィスのぞみです。
「技術・人文知識・国際業務」の上陸許可基準(特に学歴要件・実務経験年数)について、ご質問の多い内容を中心に確認します。
総論
「技術・人文知識・国際業務」については、行おうとする活動(在留資格該当性)によって、
・技術カテゴリー
・人文知識カテゴリー
・国際業務カテゴリー
に大別できることは、前回までにご説明しました。
◆「技術」カテゴリーで行われる活動は、「自然科学の分野に属する技術若しくは知識を要する業務」で、ざっくり言うと理系の業務
◆「人文知識」カテゴリーで行われる活動は、「法律学、経済学、社会学その他の人文科学の分野に属する知識を要する業務」でざっくり言うと文系の業務
◆「国際業務カテゴリー」で行われる活動は、「外国の文化に基盤を有する思考若しくは感受性を必要とする業務」
でした。
そして、今回のテーマである「学歴要件・実務経験年数」(上陸許可基準)について考える際は、
■「技術カテゴリー」と「人文知識カテゴリー」
■「国際業務カテゴリー」
に分けて考えると分かりやすいと思います。
「技術」および「人文知識」の上陸許可基準
「技術」および「人文知識」の上陸許可基準は、以下の(1)(2)いずれにも該当することが必要です。
(1)学歴要件・実務経験要件として、以下のいずれかに該当すること。「いずれか」ですので、学歴要件または実務年数要件のどちらかを満たしていればよいことになります。
イ 当該技術若しくは知識に関連する科目を専攻して大学を卒業し、又はこれと同等以上の教育を受けたこと。
ロ 当該技術または知識に関連する科目を専攻して本邦の専修学校の専門課程を修了(当該修了に関し法務大臣が告示をもって定める要件に該当する場合に限る)したこと。
ハ 10年以上の実務経験(大学、高等専門学校、高等学校、中等教育学校の後期課程又は専修学校の専門課程において当該技術または知識に関連する科目を専攻した期間を含む)を有すること。
(2)報酬要件として、日本人が従事する場合に受ける報酬と同等額以上の報酬を受けること
(1)(2)はいずれにも該当する必要があります。
(1)のうちのイロハは、いずれかに該当すればよいです。 つまり、(1)イ&(2)、(1)ロ&(2)、(1)ハ&(2)、のどれでもよいけれど、(1)のどれかと(2)が必要ということです。
このあたりが、ちょっとゴチャゴチャしていて分かりづらいですね。
「技術・人文知識」の学歴要件
(1)「大学」「専修学校」とは
ここで、「大学を卒業し」とは、学士または短期大学士(学士(専門職)または短期大学士(専門職)を含む)以上の学位を取得した者をいいます。大学とは、日本国内の大学はもちろん、外国の大学も上記の学位を付与されるものであれば、大学に含まれます。
また、短期大学も、大学に含まれます。
なお、外国の大学については、それぞれの国の学制が日本と同じではないことも多く、「大学を卒業し」「これと同等以上の教育を受け」に該当するか、不明瞭な場合が多くあります。そのような場合は、文部科学省編「諸外国の学校教育」において、高等教育機関として位置づけられている機関を卒業した者は、「大学を卒業しまたはこれと同等以上の教育を受けた」者に該当するとされています。
一方、専修学校は、日本国内の専修学校に限られます。外国の専修学校は含まれません。また、日本の専修学校の専門課程を修了した方については、「専修学校の専門課程の修了者に対する専門士及び高度専門士の称号の付与に関する規程」(平成6年文部省告示第84号)第2条の規定により専門士と称することができること、又は②同規程第3条の規定により高度専門士と称することができることが必要です。
(2)専攻した科目と従事しようとする業務の関連性
外国の方が従事しようとしてする仕事の内容と、その方が学校(国内外の大学・短期大学、または日本国内の専修学校)で学習した内容が、どの程度密接に関連している必要があるか、というテーマです。
この点は、その方が学習したのが、「大学」であるか「専修学校」であるかにより判断基準が異なります。「大学」はこの業務と学習内容の関連性について、従来から「柔軟に判断」されてきました。一方、専修学校については、従来、「相当程度の関連性を必要とする」とされて、おり、大学に比較すると直接的な関連性が要求されてきましたが、令和6年2月に一部「柔軟な判断」がなされる運用に変わりました。
ア 大学または高等専門学校:柔軟に判断する
大学は、学術の中心として、広く知識を授けるとともに、深く専門の学芸を教授研究し、知的、道徳的及び応用的能力を展開させることを目的とし、また、その目的を実現するための教育研究を行い、その成果を広く社会に提供することにより、社会の発展に寄与するとされており(学校教育法第83条第1項、第2項)、このような教育機関としての大学の性格を踏まえ、大学における専攻科目と従事しようとする業務の関連性については、従来より柔軟に判断しています(海外の大学についてもこれに準じた判断をしています。)。
したがって、大卒者については、業務と専門科目の関連性は緩和して審査されており、特段の事情がない限り、関連性が肯定されます。
ですから、大卒者の申請においては、「業務と専門科目の関連性」よりも、「業務の内容そのもの(在留資格該当性)」、つまり、従事しようとする業務に一定程度以上の専門性があり、そのような専門性のある業務に、申請人が常に従事するだけの十分な業務量があることの疎明が重要になると考えています。
イ 専修学校:原則として相当程度の関連性を必要とする(緩和傾向にある)
専修学校は、職業若しくは実際生活に必要な能力を育成し、又は教養の向上を図ることを目的とするとされています(同法第124条)ことから、原則として専修学校における専攻科目と従事しようとする業務については、相当程度の関連性を必要とします。
ただし、文部科学大臣による認定を受けた専修学校(専修学校の専門課程における外国人留学生キャリア形成促進プログラムの認定に関する規程(令和5年文部科学省告示第53号)」第2条)の専門課程の学科を修了した者(以下「認定専修学校専門課程修了者」という。)については、企業等と連携して実習等の授業を行っていることや、日本社会に関する理解を促進する環境が整備されていることなどを認定要件とする専門課程を修了し、質の高い教育を受けたことにより、修得した知識を応用できると考えられることから、専攻科目と従事しようとする業務の関連性について、柔軟に判断することとしています。
また、専修学校の専門課程を修了した者が、従事しようとする業務に相当程度関連する科目を直接「専攻」したとは認められないような場合でも、履修内容全体を見て、従事しようとする業務に係る知識を習得したと認められるような場合においては、総合的に判断した上で許否の判断を行っているほか、関連性が認められた業務に3年程度従事した者については、その後に従事しようとする業務との関連性については、柔軟に判断します。
「技術・人文知識」の実務経験
10年以上の実務経験があること。実務経験の期間には、大学等において関連科目を専攻した期間も含まれます。また、「技術・人文知識・国際業務」に該当する業務に10年従事したことまで求めるものではなく、関連する業務に従事した期間も実務経験に含まれます。
「国際業務」の上陸許可基準
次のいずれにも該当していること
(1) 翻訳、通訳、語学の指導、広報、宣伝又は海外取引業務、服飾若しくは室内装飾にかかるデザイン、商品開発その他これらに類似する業務に従事すること
(2)従事しようとする業務に関連する業務について、3年以上の実務経験を有すること。ただし、大学を卒業した者が、翻訳、通訳又は語学の指導に係る業務に従事する場合は、この限りではない。
(3)日本人が従事する場合に受ける報酬と同等額以上の報酬を受けること。
国際業務の上陸許可基準では、学歴要件は定められておらず、「従事しようとする業務に関連する業務について3年以上の実務経験があること」および「日本人が従事する場合に受ける報酬と同等額以上の報酬を受けること」と定められています。
なお、「国際業務」のうち、「翻訳・通訳または語学の指導」にかかる業務に、大学を卒業した方が従事する場合は、実務経験は不要です。また、「翻訳、通訳」については、「日本語と外国語」の翻訳・通訳に限られず、ある外国語と別の外国語(たとえば中国語と英語)の通訳・翻訳も含まれます。ただし、申請人の母国語でない言語の通訳・翻訳を業務内容して申請する場合には、当該言語を、いつ、どこで、どのように、どの程度習得したかを示すことが必要です。
また、従事しようとする業務に関する実務経験は、職業活動として従事した期間を言うのであって、アルバイトとして従事した期間は含まれません。
報酬要件
申請人が、日本人が従事する場合に受ける報酬と同等額以上の報酬を受けること。
報酬とは、「一定の役務の給付の対価として与えられる反対給付」とされており、具体的には、基本給及び賞与を言います。実費弁償の性格を有する通勤手当、扶養手当、住宅手当等は含みません。
実務上、報酬の具体的な額は雇用契約書等に記載されている額をもって疎明することとなりますが、在留期間更新許可申請時には、課税・納税証明書や源泉徴収票等を提出する場合もあります。 申請人である外国人に支払われる報酬の額が「日本人と同等額以上であるか」については、基本的には、当該機関で雇用されている日本人を基準に判断されますが、一方で、他の企業の同種の日本人の平均賃金より明らかに低い報酬で雇用される場合には、不許可事由となる場合があります。
まとめ
いかがでしたでしょうか。
今日は、「技術・人文知識・国際業務」のうち、ご質問の多い「学歴要件・実務要件」と、「専攻科目と従事しようとする業務の関連性」について確認しました。
次回は、具体的な許可事例・不許可事例について、「在留資格該当性」の問題なのか、「上陸許可基準の問題なのか」を確認したいと思います。
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