技術・人文知識・国際業務①/認められている仕事の内容

こんにちは。行政書士・社会保険労務士オフィスのぞみです。

今日からは、就労系在留資格のうちのいくつかをとりあげて、その詳細を確認したいと思います。
記念すべき1つ目の在留資格は、就労系在留資格でもっともお問い合わせの多い「技術・人文知識・国際業務」です。

概要

「技術・人文知識・国際業務」は、平成26年の入管法改正により、「人文知識・国際業務」と「技術」の在留資格を統合してできた在留資格です。

しかし、「技術・人文知識・国際業務」の在留申請をする場合には、従事しようとする業務と学歴・実務経験の関連性が求められていますので、私自身は、「技術」「人文知識」「国際業務」とを、分けて考えたほうが分かりやすいと考えています。

ですから、これから数回にわたって解説するこのコラムでは、どのカテゴリーなのかを分けて確認をすすめてまいります。この点を意識して読み進めていただくと幸いです。

一方で、在留資格としては「技術・人文知識・国際業務」として1つの在留資格なので、「人文知識」類型で許可を得た方についても、在留資格該当性の及ぶ範囲においては、「技術」や「国際業務」類型の活動を行うこともできるし、「技術」類型で許可を得た場合でも、「人文知識・国際業務」の在留資格該当性の及ぶ活動を行うことができることは注意が必要です。

3つのカテゴリー

(1)技術カテゴリー
「技術」カテゴリーは、「本邦の公私の機関との契約に基づいて行う自然科学の分野に属する技術若しくは知識を要する業務」で、ざっくり言うと、いわゆる理系の業務と考えることができます。

具体的には、情報工学の技術・知識を必要とするエンジニア、プログラマー、建設機械等の設計を行う技術職などがあげられます。

(2)人文知識カテゴリー

「人文知識」カテゴリーは、「本邦の公私の機関との契約に基づいて行う法律学、経済学、社会学その他の人文科学の分野に属する技術若しくは知識を要する業務」で、ざっくり言うと、いわゆる文系の業務と考えることができます。

具体的には、経理・金融・会計・コンサルタント等の職種があげられます。

(3)国際業務カテゴリー

「国際業務」カテゴリーは、「本邦の公私の機関との契約に基づいて行う外国の文化に基盤を有する思考若しくは感受性を必要とする業務に従事する活動」とされています。

具体的には、「翻訳、通訳、語学の指導、広報、宣伝、海外取引業務、デザイン、商品開発」があり、外国の文化に基盤を有する思考若しくは感受性に基づく一定水準以上の専門的能力を必要とする文化系の活動とされています。

「本邦の公私の機関との契約」の意味

技術・人文知識・国際業務の在留資格に基づいて行う活動の条件として「本邦の公私の機関との契約に基づいて行う」という共通項目があります。

(1)本邦の

 まず、「本邦の」については、日本の国内に本店・本部を有する日本法人のほかに、外国に本社・本店・本部を有する外国法人であっても、日本国内に事業所があれば「本邦の」公私の機関に当たります。

 したがって、弊所でも実際にご相談のあった事例ですが、事業所等の拠点を外国のみに有して、本邦にまったく拠点のない事業所との契約に基づいて、日本においていわゆるリモートワークを行う場合には、「本邦の」公私の機関との契約とは認められません。

(2)公私の機関

 「公私の機関」は、契約の主体となる法人または自然人をいいます。

 個人であっても、日本国内で事業を行い、外国人が在留活動を行うことができるにたりる施設及び陣容を有していれば、公私の機関に該当します。一方、事業を行っていない個人は、公私の機関ではありません。

(3)事業の安定性・継続性

 「公私」のうち「私」つまり、国や公の機関以外の機関における活動を行う場合は、その機関の事業が、安定性・継続性を有すると認められるものでなければなりません。

 これは、「技術・人文知識・国際業務」の在留期間が、「1年・3年・5年」と定められており、一定程度の在留を許可する以上、許可の時点以降も、少なくとも許可をされている期間の間は、在留資格に該当する活動を行う必要があるからです。
 この事業の安定性・継続性を疎明するため、入管申請の際は、当該機関の売上、利益、設立年度を示す資料を添付したり、必要に応じて事業計画を添付したりします。

 さらに、事業の適正性も求められます。これは、たとえば、有料職業紹介事業を行うのであれば、厚生労働大臣の許可を取得していること、などの例があげられ、行う事業の内容により、許可・届出を適正におこなっている資料を添付したりします。

(4)契約

 まず、契約は、雇用のほか、委任、委託、嘱託も含まれます。ただし、日本で安定した生活を営むに足りる収入を確保する必要があるため、特定の(特定されていれば単独ではなく、複数でもよい)機関との継続的なものでなければなりません。

 なお、派遣就労による派遣事業者との雇用契約も、契約として認められています。実際に、在留資格認定証明書交付申請をはじめとする在留申請書類には、派遣契約を前提とする項目も用意されています。この場合、派遣元の事業内容ではなく、派遣先事業所において行う活動の内容が、「技術・人文知識・国際業務」で定める活動にあたるかどうかを判断することとなります。また、派遣就労の場合は、(3)でふれた安定性・継続性の点から、審査が厳しく行われる点には注意が必要です。

 また、契約の主体は、「本邦の公私の機関」と「外国人」である必要があります。

 この点、「外国人本人と本邦の公私の機関との間の契約関係の存在」を示す資料として、「外国の公私の機関と本邦の公私の機関が契約当事者となっている契約書が提出された場合」について、審査要領は、以下の条件を満たす場合には、外国人本人と本邦の公私の機関との間に労働契約が成立していると認めて扱うと整理しています。

・日本に入国する者として、当該外国人が特定されていること
・当該外国人の使用者たる本邦の公私の機関が特定されていること
・本邦の公私の機関が当該外国人と「労働委契約を締結する」旨が明示されていること
・当該外国人の労働条件として、労基法施行規則に定める事項が明示されていること
・本邦の公私の機関が日本の労働基準法を遵守する旨が明示されていること
・本邦の公私の機関が当該外国人に対して賃金を直接支払う旨が明示されていること

人文知識カテゴリーの在留資格該当性

(1)具体的な分野

 いわゆる文化系の分野です。具体的には、審査要領では、語学、文学、哲学、教育学、心理学、社会学、歴史学、地域研究、基礎法学、公法学、国際関係法学、民事法学、刑事法学、社会科学、政治学、経済理論、経済政策、国際経済、経済史、財政学・金融論、商学、経営学、会計学、経済統計学等が挙げられています。審査要領にあげられている分野は、これに限定する趣旨ではなく、単純就労ではない一定水準以上の文化系の活動分野を広くカバーしうる在留資格と考えられます。

(2)人文科学の分野に属する知識を必要とする業務(求められる専門性のレベル)

「人文知識」の在留資格に該当する活動であると認められるためには、単純に経験を積んだことにより有している技術・知識では足りず、学術上の素養を背景とする一定水準以上の業務であることが必要とされています。一般的に、求人の際に「未経験可、すぐに慣れます」などと記載されているような業務は、要件を満たしていないと判断されます。

 なお、「学術上の素養」については、大学(短期大学を含む)を卒業している者については、専攻科目と従事する業務の関連性は緩和して審査されることとされています(別の項目で詳しく解説します)。

国際業務カテゴリーの在留資格該当性

(1)具体的な分野

国際業務における「外国の文化に基盤を有する思考若しくは感受性を必要とする業務」とは、具体的には、「翻訳、通訳、語学の指導、広報、宣伝又は海外取引業務、服飾若しくは室内装飾にかかるデザイン、商品開発その他これらに類似する業務」とされており、これはいわゆる限定列挙とされています(上陸基準省令)。

なお、ここに限定的にかかげられている業務であれば、「外国の文化に基盤を有する思考若しくは感受性を必要とする」ことが一応推定され、「なぜその業務を行うにあたり、外国の文化に基盤を有する思考若しくは感受性を必要とするのか」の説明までは、求められていません。

(2)求められるレベル

本人が外国人であるということだけでは足りず、外国の社会、歴史・伝統の中で培われた発想・感覚をもとにした一定水準以上の専門的能力を必要とする業務を意味すると解されています。したがって、国際業務においては求められる経験は、(人文知識におけるいわゆる学歴要件とは異なり)「従事しようとする業務に関連する業務についての3年以上の実務経験」とされています(大学卒業者の翻訳、通訳、語学指導を除く)。

上陸許可基準

(1)人文知識カテゴリーの上陸許可基準

人文知識カテゴリーで在留資格を得るためには、申請する外国人が①②のどちらにも当てはまることが必要です(※A~Cについては、いずれか該当していればよい。①②については、いずれも該当している必要がある)。

①学歴要件の(A)または(B)のいずれか、または実務要件(C)を有していること。
 学歴要件(A):従事しようとする業務に就いて、これに必要な知識に関連する科目を専攻して大学を卒業し若しくはこれと同等以上の教育を受けたこと。
 学歴要件(B):従事しようとする業務について、これに必要な知識に関連する科目を専攻して日本の専修学校の専門課程を修了したこと
 実務要件(C): 10年以上の実務経験を有すること(大学、高等専門学校、高等学校、中等教育学校の後期課程または専修学校の専門課程において当該知識に関連する科目を専攻した期間を含む)。

②日本人が従事する場合に受ける報酬と同等額以上の報酬を受けること

(2)国際業務カテゴリーの上陸許可基準

国際業務カテゴリーで在留資格を得るためには、申請する外国人が①~③のいずれにも当てはまることが必要です。

①業務内容要件

 翻訳、通訳、語学の指導、広報、宣伝又は海外取引業務、服飾若しくは室内装飾にかかるデザイン、商品開発その他これらに類似する業務に従事すること

②実務要件

 従事しようとする業務に関連する業務について3年以上の実務経験を有すること。ただし、大学を卒業した者が翻訳、通訳または語学の指導に係る業務に従事する場合はこの限りではない。

③日本人が従事する場合に受ける報酬と同等額以上の報酬を受けること。

実務要件において求められる専門性の程度

上記の上陸許可基準では、人文知識カテゴリー・国際業務カテゴリーともに「実務要件」が登場しましたが、実は、そこで求められる「専門性」の程度は、人文知識カテゴリーと国際業務カテゴリーで少し異なります。

具体的には、人文知識カテゴリーでは単に「10年以上の実務経験を有すること」とされているのに対し、国際業務カテゴリーでは「従事しようとする業務に関連する業務について3年以上の実務経験を有すること」とされています。

人文知識カテゴリーにおける「10年以上の実務経験」は、「技術・人文知識・国際業務」に該当する(専門性の高い)業務に10年以上従事したことを求めるものではなく、したがって、
・国際業務カテゴリーで求められる「従事しようとする業務に関連する業務についての」実務経験よりも緩やかで広範囲であり
・専門的・技術的とは認められない「技能実習」による経験(1号1年、2号2年、3号2年)、「特定技能」による経験(1号で最長5年)も、この実務経験に含まれる 
とされています。

したがって、技能実習を3号まで修了し(5年)、特定技能1号(最長5年)を経過すれば、実務経験のみをもって10年の上陸許可基準を満たすこともあり得ます。なお、技能実習1号で入国後の1か月講習については、実務経験に算入されるのかどうか、当局から明確な回答が得られていないところ、技能実習制度上の仕組みとして、入国前に母国において一定の経験を積んでいると考えられており、10年の実務経験を満たすと認められる場合が多いと考えています。

まとめ

いかがでしたでしょうか。

今回のコラムでは、
・「技術カテゴリー」「人文知識カテゴリー」「国際業務カテゴリー」それぞれに該当する活動の種類(在留資格該当性)
・「人文知識カテゴリー」「国際業務カテゴリー」における上陸許可基準
について、確認しました。

次の記事では、「技術・人文知識・国際業務」のうち、質問の多い学歴要件と、判断に迷うケースについて確認する予定です。
今日の記事より、皆さまが直面する疑問に沿った内容をお伝えできると思います。

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