こんにちは。行政書士・社会保険労務士事務所オフィスのぞみです。
前回のコラムでは、
・「在留資格」のない外国人の方は、日本に滞在できないこと
・適正な「在留管理」のためには、「在留資格」についての知識が大切だということ
・「在留カード」を見ると、「在留資格」が分かるということ
を書きました。
今回は、この「在留資格」について、もう少し詳しく見てみたいと思います。
「在留資格」とは、なんなのか
入管法では、外国人は、日本で一定の活動を行うことを目的として、日本に在留していると考えられています。分かりやすく言うと、「何の理由もなく日本にいる」という事態は想定しておらず(認めておらず)、外国人の方が日本に滞在するには、「なにか目的があって」日本に滞在していると考えているわけです(そうでなければ、日本への在留を認めていない)。
そして、外国人がその在留の目的として行う活動の内容を類型化して、それぞれに対応する「在留資格を定めています。
たとえば、
在留の目的:日本で勉強したい
在留資格:留学
といった具合です。
ですから、日本における「在留資格」は、入管法が定める分類に従って、複数存在します。
そして、日本に在留する外国人は、「本邦において行うことができる活動」(活動資格)または、「本邦において有する身分又は地位」(身分資格)によって定められた「在留資格」を有することを求められています。
「活動資格」と「身分資格」
上記のとおり、入管法は、日本に滞在する外国人は「ある一定の目的をもって」日本に在留していると考えています。
そして、入管法上の「在留資格」は、大きく分けると
「A:活動内容に基づく在留資格(活動資格)」
「B:身分又は地位に基づく在留資格(身分資格)」
に分けられます。
このうち、「A活動内容に基づく在留資格」の場合、さらに
「A1:各在留資格に定められた範囲での就労が可能な在留資格」
「A2:就労できない在留資格」
「A3:個々の外国人に与えられた許可の内容により就労の可否が決められる在留資格」
に分けられます。
また、
「B:身分又は地位に基づく在留資格」
については、活動に制限はありませんので、いわゆる単純労働も含めて就労は可能です。なお、「特別永住者」も活動内容に制限はなく、いわゆる単純労働も含めて就労が可能です。
具体的な在留資格と、その在留資格によって認められている活動は、後ほど記載しますが、
ここで知っておいていただきたいのは、個々の在留資格の細かい活動内容ではなく、
・与えられた在留資格に該当しない活動を行うことはできない
ということです。
たとえば、観光目的で「短期滞在」の在留資格で日本に滞在している人は、日本で収入を得て働くことができません(すなわち、雇うこともできません)。
また、「技術・人文知識・国際業務」の在留資格を許可された外国人が、「技能」の在留資格で許可された活動を行うことはできません。
外国人を採用したいと考えた時に、「どのような在留資格の外国人を採用するか」という点が、重要なテーマになることは、お分かりいただけるでしょうか?
就労を前提とした「在留資格」(各在留資格に定められた範囲で就労が可能な在留資格)
※この章は、とばし読みしていただいて問題ありません。
- 外交(例:外国政府の大使、公使、総領事、代表団構成員等及びその家族)
- 日本国政府が接受する外国政府の外交使節団若しくは領事機関の構成員,条約若しくは国際慣行により外交使節と同様の特権及び免除を受ける者又はこれらの者と同一の世帯に属する家族の構成員としての活動
- 在留期間:外交活動の期間
- 公用(例:外国政府の大使館・領事館の職員、国際機関等から公の用務で派遣される者等及びその家族)
- 日本国政府の承認した外国政府若しくは国際機関の公務に従事する者又はその者と同一の世帯に属する家族の構成員としての活動(この表の外交の項に掲げる活動を除く。)
- 在留期間:5年、3年、1年、3月、30日又は15日
- 教授(例:大学教授等)
- 本邦の大学若しくはこれに準ずる機関又は高等専門学校において研究,研究の指導又は教育をする活動
- 在留期間:5年、3年、1年又は3月
- 芸術(例:作曲家、画家、著述家等)
- 収入を伴う音楽,美術,文学その他の芸術上の活動(興行の項に掲げる活動を除く。)
- 在留期間:5年、3年、1年又は3月
- 宗教(例:外国の宗教団体から派遣される宣教師等)
- 外国の宗教団体により本邦に派遣された宗教家の行う布教その他の宗教上の活動
- 在留期間:5年、3年、1年又は3月
- 報道(例:外国の報道機関の記者、カメラマン)
- 外国の報道機関との契約に基づいて行う取材その他の報道上の活動
- 在留期間:5年、3年、1年又は3月
- 高度専門職1号
- 高度の専門的な能力を有する人材として法務省令で定める基準に適合する者が行う次のイからハまでのいずれかに該当する活動であって、我が国の学術研究又は経済社会の発展に寄与することが見込まれるもの
- イ 法務大臣が指定する本邦の公私の機関との契約に基づいて研究、研究の指導又は教育をする活動又は当該活動と併せて当該活動と関連する事業を自ら経営しもしくは当該機関以外の本邦の公私の機関との契約に基づいて研究、研究の指導もしくは教育をする活動
- ロ 法務大臣が指定する本邦の公私の機関との契約に基づいて自然科学若しくは人文科学の分野に属する知識若しくは技術を要する業務に従事する活動又は当該活動と併せて当該活動と関連する事業を自ら経営する活動
- ハ 法務大臣が指定する本邦の公私の機関において貿易その他の事業の経営を行い若しくは当該事業の管理に従事する活動又は当該活動と併せて当該活動と関連する事業を自ら経営する活動
- 在留期間:5年
- 高度の専門的な能力を有する人材として法務省令で定める基準に適合する者が行う次のイからハまでのいずれかに該当する活動であって、我が国の学術研究又は経済社会の発展に寄与することが見込まれるもの
- 高度専門職2号
- 1号に掲げる活動を行った者であって,その在留が我が国の利益に資するものとして法務省令で定める基準に適合するものが行う次に掲げる活動
- イ 本邦の公私の機関との契約に基づいて研究,研究の指導又は教育をする活動
- ロ 本邦の公私の機関との契約に基づいて自然科学又は人文科学の分野に属する知識又は技術を要する業務に従事する活動
- ハ 本邦の公私の機関において貿易その他の事業の経営を行い又は当該事業の管理に従事する活動
- ニ 2号イからハまでのいずれかの活動と合わせて行う教授、芸術、宗教、報道の項にかかげる活動又は法律・会計業務、医療、教育、技術・人文知識・国際業務、介護、興行、技能、特定技能2号の項に掲げる活動(2号イからハまでのいずれかに該当する活動を除く)
- 在留期間:無期限
- 1号に掲げる活動を行った者であって,その在留が我が国の利益に資するものとして法務省令で定める基準に適合するものが行う次に掲げる活動
- 経営・管理(例:企業等の経営者・管理者)
- 本邦において貿易その他の事業の経営を行い又は当該事業の管理に従事する活動(この表の法律・会計業務の項に掲げる資格を有しない者は法律に拠りその行うことを許されている事業の経営又は管理に携わる活動を除く。)
- 在留期間:5年、3年、1年、6月、4月又は3月
- 法律・会計業務(例:弁護士、公認会計士等)
- 外国法事務弁護士、登録外国公認会計士その他法律上の資格を有する者が行うこととされている法律業務又は会計業務に従事する活動
- 在留期間:5年、3年、1年又は3月
- 医療(例:医師、歯科医師、看護師)
- 医師、歯科医師その他法律上資格を有する者が行うこととされている医療に係る業務に従事する活動
- 在留期間:5年、3年、1年又は3月
- 研究(例:政府関係機関や私企業等の研究者)
- 本邦の公私の機関との契約に基づいて研究を行う業務に従事する活動(教授の項に掲げる活動を除く。)
- 在留期間:5年、3年、1年又は3月
- 教育(例:中学校・高等学校の語学教師等)
- 本邦の小学校、中学校、義務教育学校、中等教育学校、特別支援学校、専修学校又は各種学校もしくは設備及び編成に関してこれに準ずる教育機関において語学教育その他の教育を行う活動
- 在留期間:5年、3年、1年又は3月
- 技術・人文知識・国際業務(例:機械工学等の技術者、通訳、デザイナー、私企業の語学教師、マーケティング業務従事者等)
- 本邦の公私の機関との契約に基づいて行う理学,工学その他の自然科学の分野若しくは法律学,経済学,社会学その他の人文科学の分野に属する技術若しくは知識を要する業務又は外国の文化に基盤を有する思考若しくは感受性を必要とする業務に従事する活動(一の表の教授,芸術,報道の項に掲げる活動,この表の経営・管理,法律・会計業務,医療,研究,教育,企業内転勤,介護,興行の項に掲げる活動を除く。)
- 在留期間:5年、3年、1年または3月
- 企業内転勤(例:外国の事業所からの転勤者)
- 本邦に本店,支店その他の事業所のある公私の機関の外国にある事業所の職員が本邦にある事業所に期間を定めて転勤して当該事業所において行うこの表の技術・人文知識・国際業務の項に掲げる活動
- 在留期間:5年、3年、1年又は3月
- 介護(例:介護福祉士)
- 本邦の公私の機関との契約に基づいて介護福祉士の資格を有する者が介護又は介護の指導を行う業務に従事する活動
- 在留期間:5年、3年、1年又は3月
- 興行(例:俳優,歌手,ダンサー,プロスポーツ選手等)
- 演劇,演芸,演奏,スポーツ等の興行に係る活動又はその他の芸能活動(経営・管理の項に掲げる活動を除く。)
- 在留期間:3年、1年、6月、3月又は30日
- 技能(例:外国料理の調理師,スポーツ指導者,航空機の操縦者,貴金属等の加工職人等)
- 本邦の公私の機関との契約に基づいて行う産業上の特殊な分野に属する熟練した技能を要する業務に従事する活動
- 在留期間:5年、3年、1年又は3月
- 特定技能1号
- 法務大臣が指定する本邦の公私の機関との雇用に関する契約(入管法第2条の5第1項から第4項までの規定に適合するものに限る。次号において同じ。)に基づいて行う特定産業分野(人材を確保することが困難な状況にあるため外国人により不足する人材の確保を図るべき産業上の分野として法務省令で定めるものをいう。同号において同じ。)であって法務大臣が指定するものに属する法務省令で定める相当程度の知識又は経験を必要とする技能を要する業務に従事する活動
- 在留期間:1年を超えない範囲で法務大臣がここに指定する期間
- 特定技能2号
- 法務大臣が指定する本邦の公私の機関との雇用に関する契約に基づいて行う特定産業分野であって法務大臣が指定するものに属する法務省令で定める熟練した技能を要する業務に従事する活動
- 在留期間:3年、1年または6月
まとめ
いかがでしょうか。
以上が、「働くことを目的として」日本に在留する外国人の方が持っていなければならない在留資格です。驚くほどたくさんありますね。
先ほども記しましたが、すべての在留資格と、それに対応する活動内容を、正確に理解することをお願いしているのでは、もちろん、ありません。
外国人を採用したいと考えた時に、「いい人だから」とか「日本語が上手だから」とか、そういうった理由で採用するのは、ちょっと深呼吸をして立ち止まっていただきたい、ということをご理解いただければ幸いです。
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