こんにちは。行政書士・社会保険労務士オフィスのぞみです。
以前、在留資格の取得の方法について、
◆(日本国外の外国人が)在留資格認定証明書の交付を受けて上陸するケース
について、解説しましたが、今回は、
◆日本に(Aという)在留資格をもって滞在している外国人が、(Bという)別の在留資格を得るケース(在留資格の変更の許可)
について、解説します。
在留資格変更の許可には、在留資格認定証明書とは異なる固有の基準(要件)がありますので、整理したいと思います。
在留資格変更許可とは
「在留資格変更許可」とは、日本にすでに何らかの在留資格をもって滞在している外国人が、現在の在留資格とは異なる活動を行いたい場合に、自分の在留資格を別のものに変更するために必要な許可のことです。
たとえば、留学生として日本に来ていた外国人が、卒業後に日本で就職し働きたいと考えたとき、留学の在留資格から「技術・人文知識・国際業務」などの就労が可能な在留資格に変更する必要があります。
この許可を受けると、外国人は許可された新しい在留資格をもって在留することとなり、これによって、在留期間も変更されます。
在留資格変更許可の申請と許可の要件
入管法20条第3項は、「法務大臣は、当該外国人が提出した文書により在留資格の変更を適当と認めるに足りる相当の理由があるときに限り、これを許可することができる」としています。
(1)当該外国人が提出した文書により
これは、原則として審査が書面により行われていることを意味し、許可要件に適合することを示す根拠資料(入管を納得させる資料)は、申請人である外国人が用意しなければならないことを意味しています。
(2)在留資格の変更を適当と認めるに足りる相当の理由があるときに限り
在留資格の変更許可に関しては、「在留資格の変更、在留期間の更新許可のガイドライン」(平成20年3月)が公表されています。
その中では、「相当の理由があるか否かの判断は、専ら法務大臣の自由な裁量にゆだねられ」とされて、法務大臣の広範な裁量が認められるべきことが明示されています。
そして、このガイドラインの中では、判断を行うに際して考慮すべき具体的な事項として、全部で8項目が定められています。ただし、そのうち、
1は、在留資格該当性の問題であり、
2は、上陸許可基準の問題であり、
3~8が「適当と認める相当の理由があるか否かの判断に当たっての代表的な要素」である
とされており、これらの事項にすべて該当する場合であっても、すべての事情を総合的に考慮した結果、変更または更新を許可しないこともある、と述べています。
以下に、3~8の詳細を確認します。
3.現に有する在留資格に応じた活動を行っていたこと
申請人である外国人が、現に有する在留資格に応じた活動を行っていたことが必要です。例えば、失踪した技能実習生や、除籍・退学後も在留を継続していた留学生については、現に有する在留資格に応じた活動を行わないで在留していたことについて正当な理由がある場合を除き、消極的な要素として評価されます。
4.素行が不良でないこと
素行については、善良であることが前提となり、良好でない場合には消極的な要素として評価され、具体的には、退去強制事由に準ずるような刑事処分を受けた行為、不法残留をあわせするなど出入国在留管理行政上適当でないとされるべき行為を行った場合は、素行が不良であると判断されることとなります。
5.独立の生計を営むに足りる資産又は技能を有すること
申請人の生活状況として、日常生活において公共の負担となっておらず、かつ、その有する資産又は技能等から見て将来的に安定した生活が見込まれること(世帯単位で認められる場合もあります)が求められます。仮に公共の負担となっている場合であっても、在留を認めるべき人道上の理由が認められる場合には、その理由を十分勘案して判断することとなります。
6.雇用・労働条件が適正であること
我が国で就労している(しようとする)場合には、アルバイトを含めての雇用・労働条件が、労働関係法規に適合していることが必要です。
なお、労働関係法規違反により勧告等が行われたことが判明した場合は、通常、申請人である外国人に責はないため、この点を十分に勘案して判断することとなります。
7.納税義務を履行していること
納税の義務がある場合には、当該納税義務を履行していることが求められ、納税義務を履行していない場合には消極的要素として評価されます。例えば、納税の懈怠により刑を受けている場合は、納税義務を履行していないと判断されます。なお、刑を受けていなくても、高額の未納や長期間の未納などが判明した場合も、悪質なものについては同様に取り扱います。
8.入管法に定める届出等の義務を履行していること
入管法上の在留資格をもって我が国に中長期間在留する外国人の方は、入管法第19条の7から第19条の13まで、第19条の15及び第19条の16に規定する在留カードの記載事項に係る届出、在留カードの有効期間更新申請、紛失等による在留カードの再交付申請、在留カードの返納、所属機関等に関する届出などの義務を履行していることが必要です。
〈中長期在留者の範囲〉
入管法上の在留資格をもって我が国に中長期間在留する外国人で次の①〜⑤のいずれにも該当しない人
①「3月」以下の在留期間が決定された人
②「短期滞在」の在留資格が決定された人
③「外交」又は「公用」の在留資格が決定された人
④①〜③の外国人に準じるものとして法務省令で定める人
⑤ 特別永住者
「変更」許可申請固有の事項
以上3~8の項目については、(6を除いては)「すでに在留資格をもって本邦に滞在している外国人」固有の評価基準であることが重要だと考えます。
たとえば、「素行が不良ではないこと」については、日本国内で警察のお世話になったような事情がないかを評価する事項で、現在外国にいる方を呼び寄せる「認定」の手続では出番がありません。
また、「納税義務を履行していること」についても同様で、たとえば、留学生である申請人が、国民健康保険料を滞納している場合には、この点について否定的な評価をされることになりますが、この項目も、申請人が外国にいる場合には、出番がありません。
「入管法に定める届出等の義務を履行していること」についても同様です。
したがって、「留学」の在留資格を持つ留学生を、就労の在留資格(たとえば技術・人文知識・国際業務)で採用しようとする場合、これらの義務が履行されているのかを確認し、手続きを行うことが重要です。
申請が不許可になってしまったとき
在留資格変更許可申請や、在留期間更新許可申請が不許可となる理由として、多いのが、
■留学生や家族滞在の「資格外活動許可違反」
入管法で認められた週28時間を超えて、アルバイト等をしていた
■就労在留資格の場合、その在留資格で認められない活動をしていた
たとえば「技術・人文知識・国際業務」の方が、工場のライン作業で仕事をしていた
などの場合です。
実務上は、「在留資格変更許可申請」が不許可になってしまったときには、決定された在留期間が31日以上であれば、疎明資料や変更する在留資格を再検討して、再申請することを検討します。決定された在留期間が30日以下であれば、いったん出国し、認定証明書交付申請により再申請する方法を検討します。
決定された在留期間が30日以下の場合、いったん出国(帰国)し、あらためて「認定証明書交付申請」によって呼びなおすことが多いと思います。
なぜなら、在留資格認定証明書交付申請の審査基準においては、このガイドラインの適用はないからです(このガイドラインは、変更許可申請・更新許可申請に適用されます)。退去強制・出国命令に該当するような違反事由がなければ、認定証明書交付申請により呼び戻すことが可能です(退去強制・出国命令制度については、別のコラムで解説しましたので、ご確認ください)。
その他
(1)指定書の変更
特定活動や、特定技能、高度専門職など、指定書が交付される在留資格については、在留カードのに記載される在留資格の名称に変更がなくても、「在留資格変更許可申請」が必要であることに留意が必要です。
(2)短期在滞在からの在留資格変更許可申請
法20条3項ただし書きは「短期滞在の在留資格をもつて在留する者の申請については、やむを得ない特別の事情に基づくものでなければ許可しないものとする。」定め、短期滞在からの在留資格変更許可申請は原則として認めない姿勢を明らかにしています。
まとめ
いかがでしたでしょうか。
今回は、すでに日本にいる方を採用しようとする場合に必要となる「在留資格変更許可申請」について、固有の判断基準を確認しました。
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