こんにちは。行政書士・社会保険労務士事務所オフィスのぞみです。
複数の登録支援機関さまに、東京都行政書士会から、『「特定技能」在留資格に関する調査ご協力のお願い』という文書が届いているようです。
今日は、本ブログのテーマである「就労在留資格」から少し離れて、この文書に記載の内容について確認したいと思います。
調査文書の概要
文書の概要は、
◆『弁護士及び行政書士以外の者が、在留諸申請の書類を含む官公署に提出する申請書等の書類の作成を報酬を得て業として行うことは、行政書士法違反に当たるおそれがある』とする出入国在留管理庁HP(https://www.moj.go.jp/isa/applications/status/specifiedskilledworker)の注意喚起を引用したうえで、
◆以下の質問への回答を求めるもの(調査)でした。
・特定技能外国人にかかる申請取次業務を行っているか
・特定技能外国人にかかる在留申請にかかる書類作成を行っているか
・有償で行っているか、無償で行っているか
・作成している書類の内容
・行政書士を雇用して有償で行う場合でも、行政書士・行政書士法人でなければ行政書士法違反になりうることを知っているか
・特定技能にかかる相談や依頼があったら、どのように対応しているか
申請取次とは
そもそも、「申請取次制度」とは、なんなのでしょうか。
入管法は、在留申請(在留期間更新許可申請、在留資格変更許可申請など)や在留カードの記載事項変更等の手続について、原則、外国人本人が入管に出頭することを求めています。
そして、この「本人出頭原則」の例外として、
・法定代理人などの代理人が申請を行うケース
・申請取次者による申請取次
を認めています。
つまり、申請取次とは、あくまで「本人出頭」の例外、すなわち本人が入管に出頭しなくても、資格を有する取次者が代わりに入管に出頭して申請を行うことができるという事実行為であり、その前段階としての「申請書類の作成」を認めている制度ではないのです。
なお、申請取次を行える者の類型として
◆受入機関の職員:企業の職員、研修・教育機関の職員、監理団体の職員、登録支援機関の職員
◆旅行業者の職員
◆公益法人の職員
◆弁護士
◆行政書士
と定められています。
今回の調査文書が前提として指摘しているのは、
「弁護士・行政書士」以外の取次者は、本人出頭原則の例外としての取次のみを行うことができるのであって、入管に提出する書類の作成を報酬を得て業として行うことはできない
という点なのではないでしょうか。
では、なぜ、「弁護士・行政書士」以外の取次者は、書類の作成を行ってはならないのでしょうか。
行政書士法の定め
行政書士法第1条の2
行政書士は、他人の依頼を受け報酬を得て、官公署に提出する書類(略)その他権利義務又は事実証明に関する書類(略)を作成することを業とする。
行政書士法第19条
行政書士又は行政書士法人でない者は、業として第1条の2に規定する業務を行うことができない。(略)
行政書士法第1条の2は、行政書士の業務として
▶他人の依頼を受け
▶報酬を得て
▶官公署に提出する書類を作成すること、権利義務に関する書類を作成すること、事実証明に関する書類を作成すること(ただし他の法律により制限されているものを除く)
と定め、法第19条において、この業務を、行政書士又は行政書士法人でない者は業として行うことができない、と定めています。
行政書士法のこの規定が、「弁護士・行政書士」以外の取次者が、申請書類の作成を行うことを制限していると考えられています。
それでは、「報酬を得て業として行う」とは、どういうことでしょうか。
「書類の作成」を「報酬を得て」行うについて
まず、「書類の作成」とは、今回のケースでは、在留資格認定証明書交付申請、在留期間更新許可申請書、在留資格変更許可申請書をはじめとする、地方出入国在留管理庁に提出する在留諸申請書類のことです。
「報酬を得て」とは、その書類作成を、有償で行うことを意味します。
「書類作成の料金をもらわなければいいんでしょ」と考えるのですが、
“「報酬を得て」とは、書類等の作成という役務の対価の支払いを受けることであるが、官公署等に提出する書類等の作成をする者が、個々の書類の作成業務について現実に報酬を得ていなくても、なんらかの形で得た金品の全部または一部が当該書類の作成の対価とみなしうる場合も「報酬を得て」に該当すると解されて” (「詳細行政書士法第四次改訂版」より引用)おり、報酬と書類作成の対価性は実質的に判断されます。
入管業務ではありませんが、自動車販売業者が道路運送車両法に基づく登録を行う事例において、申請書の作成を無料とし、申請書の提出等について登録代行手数料として報酬を受領した場合について、「契約書等で申請書作成を無償とうたっていても、実質的に申請書作成に対する報酬に該当する部分が全体の料金に含まれていると認定できるのであれば」有償で作成するに該当する、という疑義回答が行われています。
これを、今回、調査の対象とされている登録支援機関におきかえると、申請書類の作成という名目で費用は発生しなくても、支援委託費や人材紹介料などの名目で、当該外国人にかかる支援業務全体で報酬が発生していると認定できるものであれば、「有償」と判断されてしまう場合があるということになります。
なお、「業として行う」とは、一般に「反復継続し、社会通念上、事業の遂行とみることができる程度のものをいう」と理解されています。
まとめ
今回の登録支援機関を対象とする調査について、
■登録支援機関の職員は、本人出頭原則の例外としての取次ぎはできるが、在留申請にかかる申請書類の作成を有償で業として行うことはできない
■登録支援機関の職員として、各都道府県会に行政書士登録をしている行政書士を雇用していたとしても、登録支援機関自身が行政書士(または行政書士法人)でない限り、登録支援機関は、申請書類の作成を有償で業として行うことはできない
ことを前提として、その実態を調査するものであったと考えます。
在留申請書類の作成は、行政書士または行政書士法人にご相談ください。
行政書士・社会保険労務士事務所オフィスのぞみでは、入管法にのっとた在留諸申請をはじめとする在留管理と、労働関係法令にのっとった労務管理両方のサポートが可能です。
人材紹介会社さま、登録支援機関さまは、全国対応いたします。
監理団体(育成就労における監理支援機関)様の外部監査人にも対応可能です。
東京都行政書士会には、「かかりつけ行政書士を都内標準にしよう」という活動理念があります。
皆さまに、ちょっと風邪をひいたときにかかる「かかりつけのお医者さん」がいるように、事業者の皆さまが、行政書士に継続的に業務を依頼していただくことができるようにする取組です。
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